2012 Fiscal Year Research-status Report
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24780061
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
梅原 三貴久 東洋大学, 生命科学部, 准教授 (30469895)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 窒素欠乏 / ストリゴラクトン / LC-MS/MS / 生合成 / イネ |
Research Abstract |
ストリゴラクトン(SL)は、β-caroteneからカロテノイドイソメラーゼ(D27)、カロテノイド酸化開裂酵素CCD7(D17)、CCD8(D10)によってSL前駆体carlactoneに変換され、チトクロムP450(OsMAX1)による酸化を経て生合成される。SLの下流では、F-boxタンパク質(D3)とα/β-ヒドロラーゼ(D14)がその情報伝達に関与する。SLは、リン酸欠乏条件下で生産量が増加することがいろいろな植物で知られており、また、一部の植物では窒素欠乏条件下でも応答する。本研究では、イネの窒素欠乏応答に注目し、窒素欠乏条件でSLが増加する分子メカニズムについて調査した。まず、LC/MS-MSによるSL分析を行い、イネのSLが窒素欠乏に応答して増加することを確認した。また、同じ実験条件で栽培したイネのqRT-PCRによるSL関連遺伝子の発現解析から、D10、D17、D27、OsMAX1など多くの生合成遺伝子の発現量が窒素欠乏条件で高かったのに対し、D3やD14など情報伝達遺伝子では窒素欠乏による発現量の増加は認められなかった。イネは窒素欠乏条件に対して、自身のSLへの感度を上げるのではなく、生産量を上げることで応答していると考えられる。また、シオカリとおよび日本晴の幼苗をリン酸欠乏(-P)、-N、硝酸態窒素欠乏(-NO3)、アンモニア態窒素欠乏(-NH4)の水耕液で10日間栽培し、水耕液中のSL定量分析を行った結果、日本晴では各窒素欠乏条件で滲出量が増加したが、各処理区の間で有意差は認められなかった。ところが、シオカリでは-NO3でSLの量の増加が見られず、-NH4、-Nで増加が認められた。品種によって窒素欠乏に対する応答性が異なっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画でかかげた項目については全て実施しており、平成25年度の計画の実施に支障がないと判断されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
1.SL以外の植物ホルモン含量の変動 :植物の枝分かれには、SL以外にオーキシンやサイトカイニンの影響を強く受ける。特に、サイトカイニンは窒素施肥の影響を強く受け、窒素栄養が増えると内生サイトカイニン含量が増加する。そこで、葉、基部(頂芽を含む)、根のオーキシンやサイトカイニンの定量分析をLC-MS/MSを用いて行い、内生SLの変動パターンと比較する。 2.マイクロアレイによる窒素濃度の変化に応答する遺伝子群の網羅的な解析:マイクロアレイ解析を行う。N-で発現量が増加し、N+で発現が減少する遺伝子群のうち、内生SLと遺伝子発現の変動パターンが近い酵素遺伝子群を階層クラスタリングによって絞り込む。すでに、リン酸欠乏に応答したマイクロアレイ解析も行っている。そこで、リン酸および窒素欠乏の両方に応答する遺伝子をピックアップし、リアルタイムPCRで再度発現解析を行う。窒素とリン酸の2種類の変化に対して共通して内生SL量の変化と同じパターンを示す遺伝子があるとすれば、SL生合成に関連した重要な役割をもつ遺伝子と期待される。 3 新しいSL生合成遺伝子の同定:上記、実験2で絞り込まれた遺伝子が欠損した変異体をミュータントパネルTos17で探索してそれらを入手し、表現型を評価する。SL関連変異体であれば、枝分かれが多くなると予想される。また、同時にシロイヌナズナでも絞り込んだ遺伝子のT-DNA挿入変異株をArabidopsis Biological Resource Center (ABRC)から入手する。入手した変異体の枝分かれの数を評価し、内生SLのLC-MS/MS分析やSL処理に対する応答性について調査する。候補遺伝子によっては、Tos17やABRCで見つからない場合も予想される。その場合、遺伝子発現抑制植物をRNAiで作出し、それらの枝分かれ程度の評価、内生SLの定量分析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、主に研究で使用するLC-MS/MS用の試薬や器具、マイクロアレイや発現解析で使う分子生物学実験用試薬や器具など消耗品購入に使用する。また、6月に上海で開催されるIPGSA2013に参加する旅費、植物栽培補助を目的としたアルバイトへの謝金、学会誌投稿費を計上している。
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Research Products
(2 results)