2012 Fiscal Year Research-status Report
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24780078
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉田 昭介 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (80610766)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ゲノム解析 / ポリエチレンテレフタレート / 加水分解酵素 / クチナーゼ / 次世代シーケンサー |
Research Abstract |
本研究は、世界に先駆けて単離されたPoly ethylene terephthalate (PET)分解菌、No. 201-F6株の新規PET加水分解酵素、及びPET代謝酵素群の全容解明と応用を目的としたものである。以下に本年度の成果を述べる。 (1)次世代シークエンサー(イルミナ社Genome Analyzer IIx)を用いてNo. 201-F6株の全ゲノム解析を行った。その結果、合計5 Mbpの塩基配列、3960のORFを同定することができた。これらは近縁種のゲノム配列とほぼ同等であったため、No. 201-F6株の大多数の遺伝子情報を得ることができたと考えている。 (2)得られたゲノム情報を基に、PET分解酵素遺伝子候補の探索を行った。PET主鎖を加水分解する酵素を標的にin silico スクリーニングを行った。その結果、PET分解活性が副反応として報告されているThermobifida fusca 由来クチナーゼと51%の相同性を示す遺伝子を見出した。本遺伝子の組み換え型タンパク質の発現、精製を行い、PETフィルムと数日間インキュベートしたところ、フィルム表面に多数の亀裂を作ることが明らかとなった。また、反応上清に分解産物であるテレフタル酸を検出した。これにより、目的の新規PET分解酵素の同定に成功したと考えられる。現在、本酵素の詳細な機能解析を行っている。 本研究で見出した酵素は極めて新規性の高いものである。今後の詳細な解析により、その酵素学的諸性質を同定することで、学術的に大きく貢献することができる。また、本酵素はPETのバイオリサイクル、表面高機能化などの応用面でも期待している。現在、得られたゲノム配列を活用したトランスクリプトーム解析による本菌の新たなPET分解関連遺伝子の探索を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画したNo.201-F6株の全ゲノム解析を行い、本菌の大多数の遺伝子を同定することができた。そして、本ゲノム情報に基づくPET分解酵素の探索から、有力なPET分解酵素遺伝子の候補を同定した。そのため、次年度に予定した組み換え型タンパク質を用いた生化学的解析前倒しして実行した。その結果、本酵素がPETフィルムを分解することがわかり、本研究の大きな目的の一つであったPET主鎖分解酵素の同定を達成した。ただし、初年度に予定したPET代謝遺伝子群のトランスクリプトーム解析による探索については、PET分解酵素の解析を先に行ったため、後回しとした。本解析については、現在、準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度にPET主鎖加水分解酵素を同定した。No.201-F6は株PETを完全に、そして効率的に分解することができることから、そのために必要なタンパク質(群)が本酵素以外にも多数存在すると考えている。これらのタンパク質を網羅的なRNA解析により明らかにする。本菌はPETの部分構造であるテレフタル酸や数種の糖を資化できる。そこで、PET、テレフタル酸、糖を炭素源として本菌を培養する。次に、次世代シークエンサーによる網羅的なmRNA発現解析を行い、PETにより誘導される遺伝子群の探索を行う。候補遺伝子については組み換え型酵素の作製を行い、PETへの酵素活性、結合活性などの評価を行う。さらに、これまで得られたゲノム情報、トランスクリプト―ム情報、PET分解酵素群の生化学的解析の情報を基に、No. 201-F6株のPET代謝機構の推定を行う。すなわち、本菌がPETを認識し、分解酵素(群)を分泌し、分解産物を取り込み、二酸化炭素と水にまで代謝するまでに関与する遺伝子の推定、同定を行う。これにより、本菌による難分解物質PETの効率的な利用法を解明し、PETのバイオリサイクル、表面高機能化への基盤を構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度はPET加水分解酵素の同定に成功したため、次年度の予定を前倒しして、本酵素の生化学的解析を先に行った。それに伴い、初年度に予定していたトランスクリプトーム解析を次年度に行うよう変更した。トランスクリプトーム解析用の予算については、直ちに使用したい。
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