2014 Fiscal Year Research-status Report
細胞外分子シャペロンの新たな機能と病原細菌のバイオフィルム形成機構
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24780079
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
杉本 真也 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60464393)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子シャペロン / バイオフィルム / 細胞外マトリクス / 病原細菌 / ClpB / DnaK / 抗体 / 線虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
①DnaKの変異体解析:ATP加水分解活性、基質との相互作用、コシャペロン(補助因子)であるDnaJファミリータンパク質およびGrpEとの相互作用、などの機能を失った部位特異的DnaK変異体と部分欠損DnaK変異体の機能を大腸菌バイオフィルムモデルを用いて評価した。その結果、従来より報告されているDnaKの生理機能がバイオフィルム形成に重要であることを明らかにし、コシャペロンの必須性に関しても新しい知見を得た。 ②DnaKを標的としたバイオフィルム阻害法の確立:海外のグループによって報告されているDnaK阻害剤のなかから、大腸菌のバイオフィルム形成を阻害する化合物を探索した結果、フラボノールの一種であるミリセチンがバイオフィルム形成を阻害することを見出した。また、ミリセチンはDnaKの生理機能を阻害することで、バイオフィルム形成に重要な細胞外アミロイド線維curliの産生を抑制することがわかった。さらに、ミリセチンは大腸菌だけでなく、臨床的に問題視されているMRSAを含む黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成も阻害しうるとこが明らかとなった。 ③細胞外分子シャペロン特異的抗体を用いたバイオフィルム形成阻害:抗ClpBポリクローナル抗体を培地に添加することにより、黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成が特異的に阻害されることを確認した。このことは、抗バイオフィルムワクチンの開発に有益な知見であると考えられる。 ④黄色ブドウ球菌以外のバイオフィルム形成における細胞外分子シャペロンの効果:精製したClpBおよびDnaKをコレラ菌と緑膿菌の培養液に添加することで、バイオフィルムの形成が促進されることを示した。 以上の成果の一部は、Antimicrobial Agents and Chemotherapy誌に掲載され、Microbial Biotechnology誌にもオンライン先行掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DnaKの変異体解析、細胞外分子シャペロン特異的抗体を用いたバイオフィルムの形成阻害、黄色ブドウ球菌以外のバイオフィルム形成における細胞外分子シャペロンの効果に関しては、おおむね当初の計画通りに進展した。また、DnaKを標的としたバイオフィルム阻害法の確立に関しては、当初計画されていなかった課題であるが、すでに米国微生物学会が発刊するAntimicrobial Agents and Chemotherapy誌に掲載されており、当初の計画以上の進展であると評価できる。一方、線虫Caenorhabditis elegansを用いたバイオフィルム感染実験に関しては、線虫がMRSAに対して忌避行動を示したり、バイオフィルムの分厚さゆえに顕微鏡観察が困難になるという点を克服できず、当初予定していた細胞外分子シャペロンの病原性における機能を把握することはできなかった。 以上の理由により、本研究の達成度を「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
線虫C. elegansを用いたバイオフィルム感染実験が困難であると判断されたため、研究計画を変更して、分子シャペロンを標的としたバイオフィルム阻害法の開発を推進する。具体的には、DnaKの機能を阻害することで大腸菌のバイオフィルム形成を阻害する化合物として見出したミリセチンをリード化合物として、より効果的に大腸菌のバイオフィルム形成を阻害する類縁体の探索を行う。すでに、ミリセチンよりも約10倍活性の高い(50%阻害濃度IC50が約1/10)候補化合物を見出しており、今後、その作用機序の解明や、より活性の高い化合物の探索を試みる。また、それらの大腸菌以外(ブドウ球菌、コレラ菌、緑膿菌)のバイオフィルムに対する効果について検証する。さらに、様々な抗生剤との併用効果についても検討する。これらにより、様々な細菌もしくは菌種特異的なバイオフィルム制御法の開発が可能になると考えられる。また、種々の薬剤に対して高い耐性を示すバイオフィルム内部の休眠状態の菌(Persister cells)に対しても有効な戦略の提案につながることが期待される。
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Causes of Carryover |
平成26年度に線虫を用いた黄色ブドウ球菌バイオフィルム感染実験を行い、その結果をもとに細胞外分子シャペロンの病原性への寄与を評価し、国内学会で発表する予定であったが、線虫の感染実験系をうまく確立できなかったため、計画を変更し、分子シャペロンを標的とする薬剤によるバイオフィルム阻害実験を行うこととしたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、平成27年度に分子シャペロンの阻害薬を用いた解析と学会発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Immuno-electron microscopy of primary cell cultures from genetically modified animals in liquid by atmospheric scanning electron microscopy2014
Author(s)
Takaaki Kinoshita, Yosio Mori, Kazumi Hirano, Shinya Sugimoto, Ken-ichi Okuda, Shunsuke Matsumoto, Takeshi Namiki, Tatsuhiko Ebihara, Masaaki Kawata, Hidetoshi Nishiyama, Mari Sato, Mitsuo Suga, Kenichi Higashiyama, Kenji Sonomoto, Yoshimitsu Mizunoea, Shoko Nishihara, Chikara Sato
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Journal Title
Microscopy and Microanalysis
Volume: 20(2)
Pages: 469-483
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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