2013 Fiscal Year Research-status Report
プラスミドが異種細菌間を接合伝達するための必須因子の同定
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24780087
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
新谷 政己 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20572647)
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Keywords | プラスミド / 接合伝達 / 核様態タンパク質 |
Research Abstract |
プラスミドは異なる細菌間を接合伝達現象によって移動可能な遺伝因子である.本研究では,これまであまり対象とされてこなかった,異種細菌間における接合伝達に必須な因子の取得を目指して実施した.モデルプラスミドとして,申請者がこれまでに用いてきた,環境中における遺伝子の水平伝播を担う重要なプラスミド,pCAR1およびNAH7を材料とした.昨年度,供与菌・受容菌のランダムな変異株ライブラリーを取得するべく,アラビノース誘導型プロモーターを内包するミニトランスポゾン転移用のベクターを作製した.本ミニトランスポゾンは,遺伝子の破壊も,周囲の遺伝子の発現の賦活化も可能である.しかし,受容菌のランダム変異株のライブラリーの構築を試みたものの,十分数の変異株を得ることができなかった. 一方,pCAR1上のORF145-ORF146遺伝子産物が接合伝達には必須でないことが確認されたが,双方を欠損するpCAR1の接合伝達頻度が低下することが明らかになった.また,pCAR1上にコードされる3つの核様態タンパク質が,異種微生物間の伝達に必須な因子であることが示唆された. また昨年度,pCAR1とは異なる不和合性群に属するNAH7プラスミドに関して,受容菌の種類を変えると,接合伝達頻度が極めて低くなる現象を見出した.今年度,pCAR1,NAH7について,環境条件を変えた際の接合伝達頻度を比較するとともに,供与菌・受容菌の種類を変えた際の接合伝達頻度についても比較した.その結果,同じ属種の同じ株由来の受容菌Pseudomonas resinovorans CA10dm4株について,片方に対しては接合伝達しない一方で,もう片方には伝達するという現象を見出した.この原因について明らかにすることを目的に,2菌株の全ゲノムについて,次世代シークエンサーを用いて比較解析を試みている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変異株ライブラリーについて作製を試みたところ,当初の見通しよりも変異株の取得数が非常に少なく,本手法で異種微生物間の接合伝達において必須な因子を同定するのは難しいと考えられた.一方,pCAR1上のORF145およびORF146については,これらを欠損したプラスミドの接合伝達頻度が低下することから,異種微生物間の伝達に関与する可能性が考えられた.また,pCAR1上には3つの異なる核様態タンパク質をコードする遺伝子(pmr,pnd,phu)が存在するが,このうち,pmrとpnd,またはpmrとphuを欠損するpCAR1は,同一の菌株(P. putida KT2440株)間については伝達するものの,KT2440株からPseudomonas resinovorans CA10dm4には伝達しない現象を見出した.従って,pCAR1に関しては,核様態タンパク質が異種微生物間の接合伝達に重要な因子であると示唆された.一方,昨年度,異種微生物間の接合伝達に必須な因子を同定するために,プラスミドと,そのプラスミドが直接伝達しない受容菌として,pCAR1とStenotrophomonas属細菌を想定していたが,pCAR1を有するStenotrophomonas属細菌の復元に至らなかった.今年度,新たにNAH7とCA10dm4株(前年度全塩基配列を決定・発表済み)の組み合わせについて調べていたところ,当初NAH7の伝達しないCA10dm4株において,伝達可能な変異株を見出すに至った.現在,当該2菌株のゲノムシークエンスに基づく比較を行っている最中である.本現象は,野生株と変異株との違いに起因する可能性が非常に高く,ゲノム配列の比較によって,その機構を解明することは,プラスミド-受容菌の違いこそあれ,本研究の目的に合致する.従って,現在までの研究の達成度はほぼ予定通り進行していると考えた.
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Strategy for Future Research Activity |
pCAR1に関しては,核様態タンパク質をコードする遺伝子を欠損する菌株に対し,相補実験を行うのが難しいことが,これまでの研究で明らかになっている.そこで本年度は,相補実験を含め,3つの核様態タンパク質が異種微生物間の伝達に必須かどうか,より詳細に調べる. また,NAH7が伝達可能になったCA10dm4株の変異株については,既に発表済みの完全長ゲノム配列を基に,野生株と変異株をリシークエンスし,それらの違いを明らかにすることで,異種微生物間の伝達に必須な受容菌側の因子を同定する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
pCAR1の変異株ライブラリー作製と対象変異株のスクリーニングのために用いる予定であったプラスティック消耗品について,ライブラリーからのスクリーニングを行わずに研究を推敲することにした.この実験計画の変更によって,物品費が当該予定額よりも少なくて済んだ.一方,物品費が少なくなった分の一部は,積極的に学会発表を行うなど旅費に使用したために,最終的に35862円の次年度使用額が生じた. 最終年度のため,本研究をまとめ,積極的に学会発表・論文投稿を行う費用として用いる予定である.
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Research Products
(10 results)