2012 Fiscal Year Research-status Report
「生活細胞一定の法則」に基づく自己間引きの法則の再検討
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24780155
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
井上 昭夫 熊本県立大学, 環境共生学部, 准教授 (80304202)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 自己間引き |
Research Abstract |
当該年度に実施した研究の成果は,以下の通りである。まず,本研究課題における基本構想を論文として公表した(井上,北方林業,2012)。この構想によって,樹幹表面積一定の法則(Inoue, J. For. Res., 2009)の生物学的な意味づけが初めて明らかにされた。すなわち,樹幹表面積は生活細胞の量に比例すると考えられることからみて,樹幹表面積一定の法則は,単位面積あたりに生存できる細胞の量が地域や樹種ごとに決まっているという解釈を可能にするものと考えられた。この解釈は,従来,木本植物における自己間引きの研究において無視されてきた生活細胞と死細胞の区別に力点を置いたもので,今後の研究における新たな視点を提示する解釈だと言って良い。 次いで,国内各地のスギ・ヒノキ人工林において収集されたデータをもとに,幹表面積一定の法則について再検証を行った。その結果,地域や樹種の違いとは無関係に,樹幹表面積一定の法則が成立していることを確認できた。このことより,樹幹表面積一定の法則は,木本植物個体群において普遍的に成り立つ法則であろうことが示唆された。この成果については,現在,論文投稿の準備を進めている。 さらに,樹幹表面積一定の法則と3/2乗則やReineke式のような他の自己間引きに関する数理モデルとの関連性についても理論的に考察した。その結果,樹幹表面積一定の法則は,既存の知見に対し,何ら矛盾しない法則として受け入れられることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実施計画については,おおむね順調に進展させることができた。特に,樹幹表面積一定の法則の再検証については,既存の資料を有効に活用することで,満足のいく成果を得ることができた。 その一方で,現地調査については,職場における講義や管理運営業務との兼ね合いから十分に実施することができなかった。また,平成24年度の成果については,有用な結果が得られたにも関わらず,論文としてまとめ,投稿することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究成果を確実に論文として公開する。また,24年度に十分に実施できなかった現地調査を実施し,その成果も論文としてとりまとめる。 加えて,平成25年度の研究計画についても着実に進捗させるとともに,その成果については学会発表や論文の形で公表できるように努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画で予定していたにも関わらず,上述の理由により十分に実施できなかった現地調査を本年度に実施することで,研究費を使用する予定である。
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Research Products
(5 results)