2015 Fiscal Year Annual Research Report
木質文化財の現場調査を目的とした新規手法の基礎的研究
Project/Area Number |
24780169
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田鶴 寿弥子 (水野寿弥子) 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (30609920)
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Project Period (FY) |
2013-02-01 – 2016-03-31
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Keywords | 樹種識別 / 非破壊 / 近赤外分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
木彫像、建造物をはじめとした木質文化財の樹種調査では、国の重要文化財に指定されているものも多く、識別に必要な木片の採取が禁じられている場合が多い。このことが、木質文化財に使用されている樹種の体系的な調査の障壁となってきた。このような背景を鑑みて、オンサイトかつ非破壊手法である樹種識別法ならびに年代調査法の新たな確立を目指してきた。そのために、ポータブル型FT-NIRの適用を導入するため、まずは卓上型FT-NIR装置による検討を行った。 研究代表者が所属する京大生存圏研究所材鑑調査室に保存されている標準試料ならびに歴史的古材標本を活用し、針葉樹・広葉樹約10種において、NIRスペクトルデータの蓄積ならびにスペクトルの二次微分、検量線構築といった処理を加えて判別分析を行ってきた。その結果、現生材についてはヒノキ・カヤ・ニヨウマツ類・スギ・モミ・ケヤキ・ハリギリ・クリ・クスノキといった様々な樹種について、例えばヒノキとカヤ、ケヤキとハリギリなど、材質が類似した樹種の判別が可能であることをつきとめた。 一方で、歴史的古材については、特にニヨウマツ類として一括りにされることの多いアカマツとクロマツ2者の判別が困難であることが判明した。現生材のアカマツとクロマツは分類が可能であることから、古材では経年劣化による吸着水の変動などが識別にマイナスに働いていることが推察された。しかしながら、波長領域を狭めた判別分析などを検討するなど、方法論や解析法の深化につとめ、現在も継続して、古材の識別調査への適用をすすめている。なお、年代推定のためのスペクトルデータの活用は、基礎的データを蓄積している段階である。
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