2012 Fiscal Year Research-status Report
クロマグロ仔魚にとっての魚食の重要性の解明:大量種苗生産によるアプローチ
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24780197
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
田中 庸介 独立行政法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所まぐろ増養殖研究センター, 研究員 (70454626)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | クロマグロ / 魚食性 / 安定同位体比 / 耳石 |
Research Abstract |
クロマグロは生活史初期にプランクトン食から魚食へと食性が転換する。本研究では,本種仔魚の魚食性への転換が,その後の成長や生き残りにとって,どのような役割をはたすのかを飼育技術を活用して明らかにすることを目的とする。平成24年度では,(1)種苗生産水槽からのサンプリング,摂餌履歴と成長履歴の分析,(2)飢餓耐性の解明(3)餌料仔魚給餌時期の成長への影響の解明,に関する分析および飼育実験を行った。 (1)2012年に行った種苗生産2事例にて餌料仔魚給餌開始時,給餌開始3日後,5日後に,生残魚と死亡魚を約50尾ずつ採集した。扁平石を摘出した後,窒素安定同位体比(δ15N)を個体ごとに分析した。餌料仔魚の給餌開始3日後と5日後についてδ15Nの値を生残魚と死亡魚で比較したところ,生残魚のδ15Nは死亡魚よりも有意に高い値を示した。この結果は,生残魚は速やかに餌料仔魚を利用しているのに対し,死亡魚は餌料仔魚を摂餌できず,よりワムシに依存していることを示唆している。今後これらの仔魚の耳石輪紋解析を行い,餌料仔魚の摂餌と成長,生残の関係を調べる予定である。 (2)餌料仔魚を給餌した仔魚とワムシを継続して給餌した仔魚の飢餓耐性を比較した。餌料仔魚の給餌3日後,6日後,9日後の仔魚を用いて無給餌条件下で飼育し生残率を調べた結果,餌料種にかかわらず無給餌条件2日後には全滅した。このことから,魚食性発現の有無にかかわらずクロマグロ仔魚の飢餓耐性は著しく低いことが明らかとなった。また,回復可能な飢餓日数(PNR)は1日未満であると判断された。 (3)平成25年度に予定していた餌料仔魚の給餌時期と成長の関係の解明について小型水槽(500L)を用いて調べた。17日齢から3日ずつ餌料仔魚の給餌時期を遅らせて飼育した結果,同一日齢においても給餌時期の違いによって顕著な成長の差が生じることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種苗生産過程におけるサンプリングを順調に遂行でき,十分なサンプルを確保することができた。安定同位体比分析についても半数の分析が終了し,耳石輪紋解析についてもほぼデータの収集を終え,解析中である。小型水槽を用いた4つの飼育実験のうち3つを終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続き,種苗生産1事例についてサンプリングを行う。安定同位体比分析と耳石輪紋解析を行い,摂餌履歴と成長履歴について生残魚と死亡魚のデータを収集する。 また,餌料仔魚密度の成長への影響の解明のための小型水槽飼育実験を行う。2年間の分析・実験結果を用いて,生き残りや死亡の原因を飢餓耐性および成長の良否の側面から定量的に評価し,種苗生産過程で調べた本種仔魚の成長・生残過程における魚食の役割を解明する。研究を遂行する上での問題点は特にない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
耳石輪紋解析に用いるスライドガラス器具などを購入する。
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Research Products
(1 results)