2012 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムワイドな系統解析によるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)誕生の解明
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24780298
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
椿下 早絵 酪農学園大学, 獣医学部, 講師 (50616894)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | MRSA / Staphylococcus sciuri / mecA / 次世代シークエンサー / SCCmec |
Research Abstract |
<研究①>メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌がメチシリン耐性をコードしているStaphylococcal cassette chromosome mec(以下、SCCmec)と呼ばれる動く遺伝因子を染色体上に獲得することにより誕生するが、その起源は1961年の最初のMRSAの発見以来、謎のままであった。その起源を明らかにするため、動物由来ブドウ球菌種であるS. sciruiおよびS. lentusに注目した。これらの菌種と近縁の動物由来ブドウ球菌種であるS. fleurettiiの染色体上にSCCmecの2つの重要な構成因子のうちの1つであるメチシリン耐性遺伝子(以下、mecA)の起源が保存されていること、またこれらの菌種のSCCmecはプロトタイプが多いことから、SCCmecの形成または供給に関与している可能性が高いためである。動物由来ブドウ球菌779株の中からmecA陽性S. sciuri 3株、S. lentus 11株を選出し、SCCmecの塩基配列を決定し、解析した。これらの株は、いずれも染色体上にプロトタイプのSCCmecを保有していた。また、新規メチシリン耐性遺伝子を発見し、より詳細な解析を進めているところである。 <研究②>当初の予定は平成24年度内に動物由来ブドウ球菌4菌種5株のドラフトシークエンスのgap部分を修正し、環状DNAとして完成させ、平成25年度に、illuminaで解析したリードをマッピングしゲノムを完成させる予定であったが、それを変更し、株ごとに完成させる方法にした。平成24年度内に5株のうち3株のゲノムを完成させた。いずれも、transposase、insertion sequenceなどのmobile elementを多く保有しており、SCCmecの形成または供給に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
<研究①>目標としていた動物由来メチシリン耐性株の選出、SCCmec領域の塩基配列決定、アノテーションが完了した。さらに、新規メチシリン耐性遺伝子を発見した。 <研究②>当初予定していた全ゲノム完成までの手順を変更したが、すでに5株中3株のゲノムを完成させたので、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
<研究①>アノテーションの結果で得られた遺伝子情報を精査し、系統解析を行う。 <研究②>残り2株の全塩基配列を決定し、完成させる。全ゲノム解析をした5株のアノテーションを実施し、既出のブドウ球菌種のゲノム情報を合わせて、菌種間ゲノム比較を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残り2株のドラフトシークエンスのgap部分のサンガー法での解析、illuminaのリードのマッピング、マッピング後の修正箇所のサンガー法での解析のために研究費を使用する。また、本研究で協力いただいている順天堂大学での研究打ち合わせ、研究成果を発表するための学会参加費用、論文投稿料に研究費を使用する。 当初、サンガー法での塩基配列解読を酪農学園大学に設置されているシークエンサーで実施する計画であったが、費用的および時間的に外部委託の方が、効率が良いため、全て後者で行っている。 ドラフトシークエンスのgap部分を修正する作業において難航することもあったが、順天堂大学および国立感染症研究所の研究者に協力していただき、おおむね順調に進行している。
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