2013 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムワイドな系統解析によるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)誕生の解明
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24780298
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
椿下 早絵 酪農学園大学, 獣医学群, 講師 (50616894)
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Keywords | MRSA / S. fleurettii / Staphylococcus sciuri / mecA / 次世代シークエンサー / SCCmec |
Research Abstract |
<研究①>メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌がメチシリン耐性をコードしているStaphylococcal cassette chromosome mec(以下、SCCmec)と呼ばれる動く遺伝因子を染色体上に獲得することにより誕生するが、その起源は1961年の最初のMRSAの発見以来、謎のままであった。その起源を明らかにするため、動物由来ブドウ球菌種であるS. sciruiおよびS. lentusに注目した。これらの菌種と近縁の動物由来ブドウ球菌種であるS. fleurettiiの染色体上にSCCmecの2つの重要な構成因子のうちの1つであるメチシリン耐性遺伝子(以下、mecA)の起源が保存されていること、またこれらの菌種のSCCmecはプロトタイプが多いことから、SCCmecの形成または供給に関与している可能性が高いためである。現在、解読した各株のSCCmecの配列を精査し、比較検討中である。また、本実験の中で、S. scuiriの染色体上に新規メチシリン耐性遺伝子(mecC)を発見し、動物由来S. sciuri47株のmecC遺伝子のスクリーニングを実施した。実験の結果、最初に発見した1株のみ陽性であった。 <研究②>当初の予定は平成24年度内に動物由来ブドウ球菌4菌種5株のドラフトシークエンスのgap部分を修正し、環状DNAとして完成させ、平成25年度に、illuminaで解析したリードをマッピングしゲノムを完成させる予定であったが、それを変更し、株ごとに完成させる方法にした。transposase、insertion sequenceなど、同じ配列が複数ある株のゲノム解読に時間がかかり、平成25年度内に5株全てのゲノムを完成させることはできなかった。平成26年度は、全5株のゲノム解読の完成に向けて、実験を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
<研究①>目標としていた動物由来メチシリン耐性株の選出、SCCmec領域の塩基配列決定、アノテーションが完了した。現在、各株のSCCmecの遺伝子構造について比較・解析中である。また、本研究の実験途中で発見した新規メチシリン耐性遺伝子のスクリーニング検査を行った。よって、研究①に関しては、遅れは無い。 <研究②> transposase、insertion sequenceなど、同じ配列が複数ある株のゲノム解読に時間がかかり、平成25年度内に5株全てのゲノムを完成させることはできなかった。平成26年度は、全5株のゲノム解読の完成に向けて、実験を継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
<研究①>アノテーションの結果で得られた遺伝子情報を精査した後、各株の遺伝子構造を比較し、SCCmecの2つの重要な構成因子のうちのひとつであるccr gene complexの起源を探究することによって、SCCmecの起源の解明を目指す。 <研究②>残り2株の全塩基配列を決定し、完成させる。全ゲノム解析をした5株のアノテーションを実施し、既出のブドウ球菌種のゲノム情報を合わせて、菌種間ゲノム比較を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
塩基配列解析を一部、次年度に繰り越したため。 残り2株のドラフトシークエンスのgap部分のサンガー法での解析、illuminaのリードのマッピング、マッピング後の修正箇所のサンガー法での解析のために研究費を使用する。また、研究成果を発表するための学会参加費用、論文投稿料に研究費を使用する。これまでの研究成果を2014年7月27日からカナダ・モントリオールで開催されるInternational Union of Microbiology Societiesで発表予定である。 当初、サンガー法での塩基配列解読を酪農学園大学に設置されているシークエンサーで実施する計画であったが、費用的および時間的に外部委託の方が、効率が良いため、全て後者で行っている。
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[Journal Article] <Review> Genomic Basis for Methicillin Resistance in Staphylococcus aureus.2013
Author(s)
Hiramatsu K, Ito T, Tsubakishita S, Sasaki T, Takeuchi F, Morimoto Y, Katayama Y, Matsuo M, Kuwahara-Arai K, Hishinuma T, Baba T.
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Journal Title
Infection and chemotherapy
Volume: 45
Pages: 117-136
DOI
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