2013 Fiscal Year Annual Research Report
セロトニン環境に着目した犬の炎症性腸疾患の病態解析
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24780306
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
井手 香織 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (40550281)
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Keywords | セロトニン / 犬 / 慢性腸症 / 炎症性腸疾患 / 獣医内科学 |
Research Abstract |
セロトニン(5-HT)は腸管クロム親和性細胞(EC細胞)が産生する消化管ホルモンであり、ヒトの過敏性腸症候群や炎症性腸疾患(IBD)の病態に深く関与している。犬のIBDは最も多い慢性消化器疾患であるものの、診断・治療が困難であり、未解明の病態が複数混在すると考えられる。本研究では、5-HTに着目した犬のIBD病態解析を行った。 【5-HT陽性EC細胞の解析】平成24年度に本研究で確立した犬の消化管粘膜組織を用いた5-HT免疫組織化学染色法を用いて,健常犬とIBD症例犬の十二指腸粘膜組織中における5-HT陽性細胞数を比較した。その結果,症例犬において有意に多いことが明らかとなり,犬IBD症例の十二指腸粘膜組織中では健常個体に比べてEC細胞が増数している可能性が示唆された。 【5-HT関連因子の遺伝子発現解析】健常犬とIBD症例犬の十二指腸粘膜組織を用いて,セロトニントランスポーター(SERT)、トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH1)の各遺伝子mRNA量をリアルタイムRTPCR法により定量,比較した。その結果,症例群全体としては健常群に比べて,SERT遺伝子mRNA量が有意に低いことが示され,TPH1遺伝子mRNA量は差が認められなかった。一方,症例群内では,SERT遺伝子mRNA量が特に低い群とTPH1遺伝子mRNA量が特に低い群の2群に分かれ,後者は数が少なかったものの値は健常群の値を大きく逸脱していた。 以上のことから,犬IBD症例における腸粘膜組織中セロトニン環境は,健常犬に比べて逸脱していることが示唆された。具体的にはEC細胞数の増加とSERT発現の低下によって組織中5-HT量が正常よりも増えている可能性が考えられた。本研究は,犬IBDの新しい一病態を提示するものであり,今後より詳細に検討する余地があると考えられた。
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Research Products
(2 results)