2012 Fiscal Year Research-status Report
針刺行動欠損個体の遺伝学的解析と刺さないミツバチ品種の作出
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24780323
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
高橋 純一 京都産業大学, 総合生命科学部, 准教授 (40530027)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 応用昆虫学 / 養蜂学 / DNA育種 |
Research Abstract |
大規模飼育によるスクリーニングからセイヨウミツバチ群の中で温和・温順で針刺行動を示さない突然変異体群を使って、次世代の育成を行った。育成には、プラスチック製人工王台から未交尾の新女王蜂を200個体と雄蜂専用巣房を使って雄蜂を約500個体を育成した。4月から11月に4から5世代を人工授精法により1個体雄蜂の精子を利用して、総計50群の実験群を養成することに成功した。養成した新しい群に対しては、連続的に針刺行動の有無や攻撃性の程度について観察実験による評価を行い、針刺行動の欠損や温和・温順な性質が次世代に受け継がれていることが確認できた。F2世代の交配に使用した群は、基礎群として働き蜂の針刺行動の欠損しているF1の上位5群を次の世代の選抜候補として同様に確認実験を行った。針刺行動が欠損している群をもとに、働き蜂の針刺行動や攻撃性に関連する遺伝子の同定を目的とした遺伝子解析を行った。解析には、SNPのマーカーとマイクロサテライトDNAマーカーを使用してジェノタイピイング解析を行った。遺伝子の同定は、セイヨウミツバチ群の群単位で働き蜂の攻撃性の有無から刺さない個体と刺す個体の2つのグループに分け、pooled DNA typingにより相関性の高い遺伝子座の抽出と連鎖地図の作製を行った。また、人工授精法の利便性を計るために、精子の長期的な保存を目的として研究を進めており、これまで数日までしか保存できなかった精子保存を1ヶ月まで延長することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である性質が温順・温和であり針刺行動を示さないセイヨウミツバチ群の形質を、野外での観察実験的手法を用いて確認することができた。さらにその形質が、次世代に遺伝することを遺伝マーカーおよび人工授精法による選択交配により確認することができた。性質が温順・温和であり針刺行動を示さないセイヨウミツバチ群は、遺伝的な性質によることが証明できた。 大量に人工増殖により増やした女王蜂および雄蜂を利用して、野外での自然交配によっても、同様に性質が温順・温和であり針刺行動を示さない形質を持った個体同士を選択的に交配させ、それが次世代に遺伝することがわかった。この結果は、将来、実用化を進めるにあたり、養蜂場単位で大規模に増殖することができることを示している重要な結果である。 DNAマイクロサテライトおよびSNPの遺伝マーカーを利用したジェノタイピング解析では、性質が温順・温和であり針刺行動を示さないセイヨウミツバチ群の遺伝子解析から、その形質を制御している可能性のある候補遺伝子座を複数見つけることができた。 人工授精法の技術確立では、精子の短期的な保存が可能であることがわかった。 これらの結果から、研究はおおむね順調に進展していると判断できた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に開発した人工授精法を用いて、針刺行動や攻撃性に対して欠損性の評価が高いミツバチ群を5群程度選抜する。純系の確立を目的に女王蜂と雄蜂を育成し、戻し交配を行い針刺行動を消失させた女王蜂を50匹作成する。そして前年度と同様の方法で選抜交配を進めていく。遺伝子解析は、マイクロサテライトDNAマーカーおよびSNPマーカーによるpooled DNA typing法を行う。針刺行動や攻撃性に関連する遺伝子座の特定と遺伝子の同定を行うために遺伝子座の絞り込みをした領域を重点的にシークエンサーによる大規模遺伝子解析を行い、候補遺伝子の同定を試みる。選抜実験は、平成11月を目途に終了する予定である。この間で、おおよそ8から10世代程度の選抜が可能である。選抜する個体を対象にBLUP法による育種価の予測ならびにマーカースコアの計算を行い、作成した選抜指数式に代入し、候補となる女王蜂ごとに指数値を求める。この指数値の上位の女王蜂の巣から次世代の親となる新女王蜂と雄蜂を選抜する。最終的には平成26年1月頃をめどににこれらの結果をまとめて、刺さないミツバチについて遺伝学および養蜂学的視点から総合的な評価を行う予定である。本研究の成果は、ミツバチの針刺行動を制御する遺伝子の同定、昆虫の育種へのBLUP選抜の適用、DNAマーカーを使った選抜の有効性の検証という観点から、学術性が高いものと考えられるので、研究成果を専門誌に適宜公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)