2012 Fiscal Year Research-status Report
多剤耐性を克服できる新規抗HIV剤を開発するための構造基盤の解明
Project/Area Number |
24790049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Iwaki Meisei University |
Principal Investigator |
鈴木 薫 いわき明星大学, 薬学部, 研究員 (90382788)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | タンパク質 / 抗HIV薬 / 糖鎖 / レクチン / 感染症 / X線 / 構造解析 / 構造薬学 |
Research Abstract |
AHと糖鎖との結合様式を解明するために、2糖体α-1,2-マンノビオース(Man2)、三糖体α-1,2マンノトリオース(Man3)、高マンノース糖鎖(Man9)とAHとの複合体の結晶化を行った。既に結晶が得られているアポ型およびAHとMan2との結晶化条件を基に、AHとMan3、AHとMan9との結晶化を行った。結晶化サンプルとして使用する放線菌由来AHの培養および精製では、AHは培養期間の違いによりN末端の配列が不均一になっていることが判明し、このことが結晶化の再現性に影響していることが考えられた。そこで、今回は培養期間を20日間と一定にして、N末端配列が均一なAHを培養し、硫安分画およびカラムクロマトによって電気泳動的に均一な酵素標品とし、結晶化サンプルとした。 AHとMan2、AHとMan3との複合体の結晶化では、それぞれ回折実験に可能な結晶を得ることができ、X線結晶構造解析を行った。AHの立体構造は、38個のアミノ酸残基から成る3つのセグメント(糖鎖結合ポケット)が対称的に配置した環状の構造を形成し、第一の糖(M1)は環状構造周辺の溶媒領域に配置しており、第二の糖(M2)はAHと結合した配置をしていた。しかし、α-1,2-1,3Man2では、第3の糖(M3)の電子密度が確認されなかった。そこで、糖鎖の結合状態を詳細に解明するために、さらにα-1,2-1,3Man2、α-1,2-1,6Man2、α-1,2-1,3-Man3とAHとの複合体の結晶化を行った。 α-1,2-1,3-Man3とAHとの糖複合体の結晶化では最近になり結晶が得られ、X線解析を行っている。AHとMan2およびMan3で得られた結晶の立体構造が明らかになれば、糖結合様式の解明につながり、解析結果から得られる構造学的情報は抗HIV薬剤を開発する際の構造基盤となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AHと高マンノース糖鎖との結合様式を詳細に解明するためには、種々の糖鎖との結晶を用いた構造解析を行う必要がある。そこで結晶化を行ったAHとMan2、AHとMan3で結晶が得られ、構造解析により、糖が結合した状態での結晶構造を決定することができた。高マンノース糖鎖のMan9との結晶化では、まだ高分解能での結晶は得られていないが、それを補うために行ったAHとα1,2-1,3Man3との複合体の結晶が最近になり得られ、1.0Åの高分解能でのX線回折データを収集することに成功し、構造解析を進めている。この結晶構造が解明すれば、糖鎖結合様式の解明に貢献でき、今後の研究の進展にも役立つものと考えられる。 現在得られている構造学的成果は、本研究目的であるAHを新しい抗HIV薬剤として改良するための構造基盤の基礎となるため、研究目的の達成に向かって前進しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られているAHと種々のマンノース糖鎖との結晶構造解析結果を基に、AHとMan9、AHとgp120との結晶化を推進する。得られた結晶を用いてX線結晶構造解析を進めると共に、AHと糖鎖との結合特異性を向上させるための分子設計を行う。アミノ酸置換や二量体化によるAH改変体を調整する。 調整が完了したAH改変体を用いての複合体の結晶化を行い、X線解析によって、糖結合様式を調べる。調整した二量体AHとMan9および二量体AHとgp120との結晶化を行い、結晶化において時間がかかる場合には、結晶化スクリーンキットを用いて、広範囲に結晶化条件の検討を行い、研究を推進させる。 これまでの研究により、放線菌由来AHの培養と精製法は確立しており、結晶化を行う時には随時精製することで、新しいサンプルを結晶化に使用することが可能となり、結晶の再現性の向上および析出時間の短縮などが考えられる。 また、X線解析データに加えてさらに詳細に糖結合様式を解明する必要がある場合には、AHと種々のマンノースおよびgp120との結合能をITC(等温滴定型熱量測定)などにより熱力学的データを収集して詳細に解析する。種々の糖鎖によるITCデータ等の結合能の相違を基に、結晶化条件の最適化および微量分析学的実験等への応用を検討して、本研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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