2012 Fiscal Year Research-status Report
Src型チロシンキナーゼによるG2期DNA損傷チェックポイントリカバリー制御機構
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24790067
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
福本 泰典 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (10447310)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 薬学 / シグナル伝達 / 癌 / DNA損傷 / 細胞周期 |
Research Abstract |
【具体的内容】Src型チロシンキナーゼ(SFK)によるDNA損傷チェックポイントリカバリー制御機構の解析のために以下の項目を行った。(1)チェックポイントリカバリーにおけるSFKによるCdc5Lチロシンリン酸化について検討を行った。SFKによるCdc5Lチロシンリン酸化部位のリン酸化ミミック変異体はATRとのタンパク質-タンパク質相互作用が減弱していることを見出した。またSFKによるDNA損傷チェックポイント抑制の過程でCdc5Lがチロシンリン酸化を受けることを見出した(2)SFKによるDNA複製チェックポイントリカバリー制御について検討を行った。SFKの阻害に加えて、SFKの活性の亢進によってもやはりDNA複製チェックポイントリカバリーが遅延することを見出した。さらにSFK活性亢進による遅延の際にもやはりATR-Chk1経路の制御が関わっていることを見出した。(3)c-AblによるG2期DNA損傷チェックポイントリカバリー制御について検討を行った。その結果c-AblはSFKとは異なる機構でDNA損傷チェックポイントリカバリーを制御すること、またSFKおよびc-Ablに加えて新たにPDGFR/c-Kit様のチロシンキナーゼがDNA損傷チェックポイントリカバリーに関わることを見出した。 【意義】以上の解析からSFKを始めとするチロシンキナーゼがDNA損傷チェックポイントリカバリーの制御に重要であることが示された。【重要性】がんの治療効果に関わるDNA損傷チェックポイントリカバリー機構を人為的に制御する手段としてSFKを始めとするチロシンキナーゼの制御が有効な手段となりえることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに平成24年度の研究実施計画を遂行している。 (1)チェックポイントリカバリーにおけるSFKによるCdc5Lチロシンリン酸化を介したATR制御についての解析からは、ATR―Chk1経路におけるCdc5Lの制御に関するデータを得ている。さらにCdc5L以外にも、SFKによるATRーChk1経路制御に関連する可能性のあるチロシンリン酸化タンパク質を見出している。これらのチロシンリン酸化タンパク質のATR制御への関与についての解析は今後の研究の端緒となることが期待できる。(2)SFKによるDNA複製チェックポイントリカバリー制御についての解析からは、当初見出していたSFK阻害だけでなくSFKの活性亢進によってもDNA複製チェックポイントリカバリーの遅延が起きることが見出された。これはDNA複製反応そのものの制御にSFK活性の制御が重要であることを示しており、DNA複製反応制御のための新規のシグナル伝達機構として今後の発展が期待される。(3)c-AblによるG2期DNA損傷チェックポイントリカバリー制御についての解析からはSFKおよびc-Ablに加えてPDGFR・c-Kit様のチロシンキナーゼがDNA損傷チェックポイントリカバリー制御に関わる可能性が示されている。PDGFR・c-Kitは一部の消化管癌において発現が亢進していることが知られており、その治療戦略のなかで重要な分子標的となる可能性が臨床研究から示唆されている。DNA損傷チェックポイントリカバリー制御と癌治療の接点として今後の展開が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)チェックポイントリカバリーにおけるSFKによるATM-Chk2経路制御 ATR-Chk1経路に加えて、G2期DNA損傷チェックポイントリカバリーの過程でATM-Chk2経路もやはりSFK阻害によって活性が亢進することを見出した。生理的意義付けのために、このSFK阻害依存的ATM-Chk2経路活性亢進に起因する表現系の探索として、Chk2依存的G2期DNA損傷チェックポイントリカバリーの解析を行う。 (2)チェックポイントリカバリーにおける核内SFKによるChk1翻訳後修飾の制御 G2期DNA損傷チェックポイントリカバリーの過程でSFKによる核内チロシンリン酸化依存的にChk1が翻訳後制御を受けることを見出した。このChk1翻訳後修飾はSFKによるChk1不活性化の際に観察されることから、SFKによるチェックポイントリカバリー制御に関連したものであると考えている。さらに、この翻訳後修飾と同時にChk1タンパク質量が増加することを見出している。Chk1のユビキチン依存的タンパク質分解との関連を中心に、チェックポイントリカバリーへの影響について細胞生物学的・生化学的に解析する。 (3)チェックポイントリカバリーにおけるSFKによるKap1制御 Kap1はDNA損傷応答の際にATMによってリン酸化されクロマチン構造制御に関与する。上記のChk1、Chk2に加えて、G2期DNA損傷チェックポイントリカバリーの過程でKap1のATM依存的リン酸化がSFK阻害によって亢進すること、またSFKによってKap1がチロシンリン酸化を受けることを見出している(日本薬学会関東支部大会2010)。生理的意義付けのために、SFK阻害によるATM依存的Kap1リン酸化亢進のクロマチン構造とチェックポイントリカバリーへの影響について解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の使用計画として以下のものを予定している。 物品費: 1,200,000, 旅費: 50,000, 人件費・謝金: 50,000, その他: 100,000 物品費は牛血清・細胞培養用試薬・生化学用試薬・細胞生物学用試薬・遺伝子工学用試薬等の購入を予定している。 H24年度末未使用分として\1,480,781-が発生している。これは各種の経費節減策の結果である。試薬については海外メーカーからの価格の安い同一品の購入、培養については細胞培養の主なコストである牛胎児血清の仕様削減などを行っている。
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[Presentation] Chromatin structural changes by nuclear c-Abl-mediated tyrosine phosphorylation through histone deacetylation2012
Author(s)
K. Aoyama, S. Kubota, R. Yuki, K. Ishibashi, Y. Horiike, M. Morii, Y. Fukumoto, and N. Yamaguchi
Organizer
The American Society for Cell Biology, 2012 Annual Meeting
Place of Presentation
San Francisco, CA, USA
Year and Date
20121215-20121219
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