2012 Fiscal Year Research-status Report
老化血管内皮細胞の炎症亢進表現型におけるCDC42シグナルの解析
Project/Area Number |
24790272
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
伊藤 孝 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20597124)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 慢性炎症 / 血管内皮細胞 / 動脈硬化 / CDC42 / PAK2 / 寿命 / 個体老化 |
Research Abstract |
慢性炎症、すなわち弱くて長期に渡る炎症細胞の組織浸潤は、がん、動脈硬化、アルツハイマーなどの加齢に伴って起こる現在の難治性疾患の原因となっている。その原因は多くの場合無菌性の刺激によって起こると言われているものの、まだよくわかっていない。本研究では老化細胞が1.こういった疾患部位に蓄積されていること、2.炎症誘導遺伝子の発現が持続的に誘導されていることに注目し、老化細胞がこういった疾患の慢性炎症の原因であると仮説を立て研究をしている。老化細胞がなぜ細菌などの外部刺激なしに炎症を誘導するか、その分子機構はまだわかっておらず、本研究はその機構の解明を目指した。 ヒト老化血管内皮細胞を用いて172遺伝子のスクリーニングを行った結果、CDC42経路をはこれまで炎症に関する研究がほとんどなされていない、新規性の強い、老化血管内皮細胞で炎症誘導する機構として同定した。これまでの検討で、ヒト細胞のみならず、線虫でもこの経路が慢性炎症に寄与することを見出した。これはヒトと線虫の進化的距離の遠さを考えると大変興味深い知見であり、このCDC42経路の根源的な役割が伺われる。マウスでも動脈硬化モデルを含めた複数のモデルで、老化血管内皮細胞による慢性炎症誘導にCDC42経路が重要なことを示し、老化に関わる無菌炎症におけるCDC42の重要性を世界で初めて示した。 本年度に関しては、線虫でCDC42経路が免疫調節に関わるSym-1発現に関わることを示すとともに、3種類の遺伝学的マウスモデルによる解析(PDGFB-iCre;MDM2 flox; CDC42 floxマウス,ApoE KO; PDGFB-iCre;CDC42 floxマウスとApoE KO; PDGFB-iCre;CDC42 flox)で仮説を確認し、in vivoにおいてもCDC42経路が老化に関わる炎症誘導に重要なことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ期待通りにデータが出ている。前年度の下準備、予備データが功を奏している。本年度は論文対応をしっかり行い、成果の出版を完了できるよう努力する。
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Strategy for Future Research Activity |
この細胞老化による、外部由来の生物によらない免疫惹起反応が、細菌感染による急性炎症経路とどの程度区別できるかを血管内皮細胞特異的CDC42遺伝子ノックアウトマウスを用いてさらに検討を進める。CDC42が老化に根差したいわば自己免疫疾患ともいえる現象である慢性炎症にどれくらい特異的に関わるかを知ることで、老化関連疾患の治療につながりうるか、糸口をつかむ。その検証の上で、論文を投稿し、知見を公知していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
多くはマウス関連実験費に利用される予定である。PCR実験試薬にも使われる。また論文対応で査読者から指示があった実験内容に対応して、その実験に必要な試薬購入も可能性がある。
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