2012 Fiscal Year Research-status Report
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24790280
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
坂根 洋 獨協医科大学, 医学部, 助教 (80457291)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | Wnt / 上皮細胞 / 選別輸送 / クラスリン |
Research Abstract |
私共はこれまで発癌に関わるWntシグナルの制御機構に細胞内小胞輸送がどのように関わるのかを解析している。上皮細胞において、頂端面あるいは側底面への蛋白質の選別輸送は上皮細胞同士および上皮細胞と結合組織間のシグナル伝達において重要な意義を持っている。私共はこれまでに分泌性糖蛋白質であるWnt3aが上皮細胞において側底面へ選別輸送されることを明らかとしている。本年度では、Wnt3aの上皮細胞における選別輸送の制御機構を解析することを目的とした。イヌ腎上皮由来MDCK細胞においてWntの分泌に関わる膜蛋白質Wntlessが側底面に主に局在することを明らかとし、またWntlessのsiRNAによる発現抑制はWnt3aの側底面への分泌を抑制した。さらに、Wntlessはクラスリンアダプター蛋白質のサブユニットであるmu1Aとmu1Bに結合することを明らかとした。siRNAによるmu1Aとmu1Bの同時発現抑制およびクラスリンの発現抑制はWnt3aの側底面への分泌を抑制した。これらの結果から、Wnt3aはWntless、クラスリン、クラスリンアダプター蛋白質の複合体により、側底面に選別輸送されることが示唆された。また、Wnt3aと異なり、Wnt11は頂端面に選別輸送されることを明らかとし、Wnt11の選別輸送には糖鎖を認識するガレクチン3が重要であることを明らかとした。Wnt11の40番目のアミノ酸には複合型糖鎖が付加されており、Wnt11の複合型糖鎖を受ける領域をWnt3aのN末端領域と入れ換えると、Wnt3aが頂端面へ分泌されるようになり、付加されている糖鎖の種類によってWntの選別輸送が制御されていることも明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、MDCK細胞においてWnt3aの側底面への選別輸送がWntlessによって制御されていることを明らかとし、Wntlessがクラスリンおよびクラスリンアダプター蛋白質と複合体を形成することを示すことができた。クラスリン、クラスリンアダプター蛋白質もWnt3aの側底面への選別輸送に重要であることを明らかとした。また、Wntの上皮細胞における側底面あるいは頂端面への選別輸送において、Wntに付加されている糖鎖が関与するか否かを解析することを予定していたが、この点に関してもWnt11に付加されている複合型糖鎖がWnt11の頂端面への選別輸送に重要であり、この複合型糖鎖を受ける領域をWnt3aに挿入すると、側底面に輸送されるWnt3aが頂端面に輸送されることを明らかにすることができた。以上の結果を踏まえ、当初予定していた解析を順調に進めることができていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
Wntシグナル抑制因子であるDkk1は腸管上皮由来の癌細胞であるCaco-2細胞において発現が亢進しており、側底面に選別輸送されることを新たに見出している。上皮細胞における選別輸送にはSNAREと呼ばれる蛋白質群が重要な役割を担っており、側底面への輸送にはSyntaxin4、また頂端面への輸送にはSyntaxin3が関与している。Syntaxin4との結合因子として見出されたTaxilinは腫瘍組織において発現が亢進しているが、これら選別輸送に関わる一連の蛋白質が発癌に関与する分泌性蛋白質の側底面への選別輸送にどのように関わるのかは明らかではない。よって、今後の研究ではSyntaxin4とSyntaxin4に結合するTaxilinがDkk1や発癌に関連する分泌性蛋白質、またその受容体の選別輸送に関与するか否かを解析する。そのためにSyntaxin4あるいはTaxilinの発現をsiRNAにより抑制することで分泌性蛋白質と受容体の側底面への選別輸送がどうなるのかを検討する。また、Syntaxin4あるいはTaxilinの発現を抑制したときに癌組織由来の細胞の浸潤能や細胞運動がどうなるのかを検討する。さらに、Syntaxin4あるいはTaxilinがどのような分子機構で上皮細胞において側底面に蛋白質を輸送するのかを詳細に解析するため、これらの分子と結合する小胞輸送関連因子を探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究が概ね順調に進行したために消耗品の使用量が当初予定していたよりもやや少なく、そのため一部未使用金が発生した。この未使用金については、次年度の研究でSyntaxin4、Taxilinの発現を抑制するsiRNAを大量に使用する予定であるため、これらのsiRNAの購入、また、siRNAを細胞に導入する試薬の購入に使用する予定である。
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