2012 Fiscal Year Research-status Report
インスリン受容体切断の分子機構とその病態生理学的意義の解明
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24790317
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
湯浅 智之 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 准教授 (50304556)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 糖尿病 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
我々のグループは、糖尿病になるとインスリン受容体の細胞外ドメインが切断され血中に遊離するという予想外の発見をした。この分子(可溶性インスリン受容体soluble Insulin Receptor; sIR)はインスリン受容体αサブユニットとβサブユニットの一部から構成されており、細胞膜表面上のインスリン受容体がある種の蛋白分解酵素により切断され遊離していると考えられる。我々はヒト由来培養細胞株と超高感度ELISA測定法を用いてsIRの産生を再現するin vito系を構築した。本系を用いて以下のことを明らかにした。膜蛋白はMMP (matrix metalloproteinase) / ADAM (a disintegrin and metalloproteinase) ファミリーに属する蛋白分解酵素により切断されることが知られており、これらに対する阻害化合物や細胞由来の阻害蛋白質(TIMP; tissue inhibitor of metalloproteinase)を培養細胞系に供し、インスリン受容体切断に関わるか否か検討したがいずれも否定的であった。一方、高血糖時にはインスリンによる血糖値降下作用が必須であるが、それ故に高血糖によってインスリン受容体が切断されることは生体の血糖値調節機構にとって極めて非合理的な事象であると言える。一般に、高血糖下に活性化される生化学的経路として、ポリオール代謝経路,プロテインキナーゼC経路, 終末糖化産物(AGE)産生経路などが知られているが、インスリン受容体の切断にはこれらのいずれも関与しないことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜蛋白はMMP (matrix metalloproteinase) / ADAM (a disintegrin and metalloproteinase) ファミリーに属する蛋白分解酵素により切断されることが知られており、インスリン受容体もその可能性が高いと考え様々な実験をおこなったがいずれも否定的であった。意外な結果であるが、一方で興味深いとも考え他の蛋白分解酵素の検討を進めている。また、高血糖による生化学的反応としてPKC経路が最も有力であったがこれも否定的であるため、他の経路を検討しており、糖鎖付加反応の影響を詳細にみていることろである。糖鎖付加反応は糖尿病との関わりが多数報告されており興味深い。
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Strategy for Future Research Activity |
研究に用いているin vitro系は我々独自の系であり、研究内容や結果の一部もこれまでの常識にそぐわず反論が大きいと予想される。インスリン受容体の切断を担う酵素の同定と、その意義について慎重に検討を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続きin vitro系を用いて、インスリン受容体切断の分子機構を明らかにする。siRNAを用いた標的蛋白質のノックダウンを行い、分子生物学的な方法論を用いたい。切断酵素の同定には網羅的なノックダウンによる解析も検討している。なお、次年度への繰越額は、糖鎖付加反応の関与の検討のためそれらに関係する試薬の購入に使用予定である。
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