2013 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン受容体切断の分子機構とその病態生理学的意義の解明
Project/Area Number |
24790317
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
湯浅 智之 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 准教授 (50304556)
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Keywords | 糖尿病 / シグナル伝達 / 可溶性インスリン受容体 |
Research Abstract |
我々のグループは、インスリン受容体の細胞外ドメインが切断され可溶性インスリン受容体(soluble Insulin Receptor; sIR)が血清中に存在していることを世界で初めて報告した。この分子はインスリン受容体αサブユニットとβサブユニットの一部から構成されており、細胞膜表面上のインスリン受容体がある種の蛋白分解酵素により切断され遊離するものである(sheddingと呼ばれる)。この分子のELISA測定法を確立することにより、治療中を含む糖尿病患者群において健常者群より血中のsIRが有意に増加していることを見出していた。一方で、sIR値と他の血糖値マーカーとの根源的な違いは、sIRがインスリン受容体という糖代謝を担う分子そのものに由来することである。この事実は、インスリン受容体が切断されsIRが産生されることそのものに高血糖を招く要因があることを示唆しているため、本事象の詳細な分子機構の解明を行った。先行する基礎研究において、ヒト培養細胞株(HepG2)を用いた高ブドウ糖処理によるインスリン受容体切断の促進を再現するin vitro系の構築に独自に成功した。本系を用いてインスリン受容体の切断を担う酵素の探索を行った。膜に存在する蛋白分化酵素の一部は金属イオンを要求することが知られており、我々の系で検証したところカルシウム依存性にインスリン受容体が切断されていることが見出された。即ちカルシウム依存性蛋白分解酵素がインスリン受容体の切断を担っていることが判明した。一方、高血糖下に活性化されて生化学機構としてO型糖鎖付加反応が関与することを見出した。インスリン抵抗性や糖尿病の病態解明において全く新しい概念を提示するユニークな発見となった。
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Research Products
(3 results)