2012 Fiscal Year Research-status Report
病原真菌アスペルギルスフミガタスの環境応答シグナル伝達系と病原性解析
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24790410
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
萩原 大祐 千葉大学, 真菌医学研究センター, 助教 (20612203)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 環境応答機構 / 情報伝達機構 / MAPK / ヒスチジンキナーゼ |
Research Abstract |
病原真菌Aspergillus fumigatusの環境応答情報伝達系である浸透圧応答(HOG)経路について機能解析を進めており、本年度の成果は以下の2点となる。 1) HOG経路は二成分制御系とSakA MAPKカスケードから構成されており、二成分制御系の中心的な因子と考えられるNikAヒスチジンキナーゼ(HK)の機能解析を行った。nikA遺伝子破壊株は胞子形成、菌糸形態に異常を示し、高浸透圧ストレス存在下の生育低下や抗真菌剤(フルジオキソニル、イプロジオン、ピロルニトリン)の生育阻害効果の低下を示した。これらの結果から、A. fumigatusにおいてNikAは重要な生理機能を有することが示された。 2) 続いて、NikAから下流のシグナル伝達経路を明らかにするため、レスポンスレギュレーターSskAおよびSakA MAPKの遺伝子破壊株の解析を行った。これらの破壊株はいずれも、浸透圧ストレス適応を除き、NikA破壊株が示した表現型を示さなかった。すなわち、胞子形成や菌糸形態の異常、抗真菌剤感受性はSskA-SakA MAPK経路とは別の因子によって主に制御されていると考えられた。一方で、高浸透圧ストレス処理や抗真菌剤添加に対する応答を調べると、SakA MAPKが一過的にリン酸化し、このリン酸化はSskA依存的であることが示された。また、nikA遺伝子破壊株では、ストレス非存在下でもSakA MAPKが一定レベルにリン酸化されており、NikAがSakA MAPKを負に制御していることが示唆された。これらの結果からHOG経路におけるシグナル伝達は、NikA下流でSskA-SakA MAPK経路が機能している部分と、それ以外の未同定の因子が機能する部分とが存在するモデルが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の申請研究では、当初の予定通り情報伝達系因子の機能解析を進めることができている。特に、NikAヒスチジンキナーゼとその下流因子と推定されるSskA, SakA MAPKに関わる解析は概ね遂行することができた。また、予定していたマウス感染実験による病原性試験も進行中であり、最終的な結果が得られるのには、もう少しの時間が必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究方針は、研究計画どおり、NikA, SskA, SakA MAPK以外の浸透圧応答経路因子の機能解析を主に進めていきたいと考えている。これらの因子が、A. fumigatusにおいて、環境応答機構にどのように関与するのか、また、病原性に寄与しているのかについて明らかにしていくつもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請計画書ではインキュベーター等の実験機器の購入を予定していたが、支給された研究費が申請時から減額されていたために、前年度の購入を見送った。そのために多少の不便が生じているが、対応可能な範囲である。この未使用分の研究費が繰り越され、次年度研究費の使用可能額が増額したことにより、計画以上に多くの実験を進めることが可能になると考えている。
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