2012 Fiscal Year Research-status Report
ホメオドメイン転写因子pKnox1によるB細胞活性化制御機構の解明
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24790481
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
西村 深雪 東京理科大学, 付置研究所, 助教 (50609401)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 自己免疫 / B細胞 / 抗体 |
Research Abstract |
B細胞活性化や分化は様々な転写因子により制御されており、その破綻は自己反応性B細胞の出現を伴う自己免疫病の発症につながる。B細胞特異的pKnox1欠損マウスでは自己免疫病が認められることから、pKnox1がB細胞制御に必須だがその詳細は不明である。 B細胞特異的pKnox1欠損マウスの抗体産生を理解する目的で、二ヶ月齢の血清中に存在する各クラスの抗体量を測定すると、コントロールマウスと比較してIgMは正常だが、IgG1やIgA等のクラススイッチした抗体量が有意に減少していた。これはpKnox1がB細胞分化や活性化に影響を及ぼしている可能性、または活性化B細胞で発現し、クラススイッチと抗体遺伝子の体細胞超突然変異を触媒する酵素のAIDの発現制御を行っていることが考えられた。そこで、T依存的抗原としてCGGにハプテンであるNPを共有結合したNP-CGGをマウスに投与し、NP抗原に対する免疫応答を時間経過を追って解析した。まず、血清中の抗体を解析すると抗NP IgM抗体は正常であるが、クラススイッチした抗体産生が本マウスで顕著に遅延する。さらに、脾臓B細胞をFACSにて解析するとB細胞総数に変化は無いが、活性化したGL-7+/Fas+の胚中心B細胞は、本マウスにおいて特に免疫初期で減少していた。これら胚中心B細胞を単離しAIDの発現をRT-PCRで解析したが、本マウスもコントロールマウスと同等な発現量であった。以上の結果から、B細胞においてpKnox1は成熟B細胞から胚中心B細胞への分化、もしくは、B細胞活性化に寄与していることが示唆された。また、B細胞特異的pKnox1欠損マウスのB細胞における遺伝子発現を網羅的に解析するために、マイクロアレイを行った結果、KLF2等のB細胞の反応性や分化に関与する分子の発現に影響を及ぼしていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、B細胞特異的pKnox1欠損マウスとコントロールマウスの各クラスの抗体産生量の違いに着目し、分子の特定までは至らなかったがpKnox1の制御がB細胞の活性化や分化だけではなく、クラススイッチや抗体遺伝子の体細胞突然変異等に関わる分子に関与している可能性があることが示唆された。またマイクロアレイの結果においても、KLF2等のB細胞の反応性や分化に関与する分子の発現に影響することも示唆されてきている。関連分子の候補を上げるまでに至った経緯から、おおむね順調であると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
B細胞特異的pKnox1欠損マウスのクラススイッチした抗体産生量の減少に着目し、pKnox1による分子制御がB細胞の活性化や分化だけではなく、クラススイッチや抗体遺伝子の体細胞突然変異等に関わる分子に関与している可能性があることが示唆されている。またマイクロアレイの結果においても、KLF2等のB細胞の反応性や分化に関与する分子の発現に影響することも示唆されてきている。ゆえに今後は、まずマイクロアレイ解析により同定された候補分子を中心にB細胞特異的pKnox1欠損マウスを用いて解析することで、pKnox1の免疫系における役割を明らかにする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度と同様、本研究に必要な設備備品のほとんどは施設に導入済みである。よって、昨年度に引き続き、B細胞集団の単離、単離を行った細胞表面に発現する分子をフローサイトメトリーにより解析するが、蛍光色素標識フローサイトメトリー用抗体、細胞分取用試薬が必要である。また、分離した細胞の遺伝子発現の解析を行う際に、リアルタイムPCR用の試薬が必要になる。さらに、一般的な遺伝子クローニングに使用する試薬、免疫応答を確認するために必要なELISAプレートならびにELISA用の試薬、培養フラスコやチューブ、メスピペットなどのプラスチック器具などの消耗品が必要となる。また、実験動物としてマウスの購入及び飼育費が必要である。
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