2012 Fiscal Year Research-status Report
新規クルクミン誘導体CNB-001のCaMKII活性化および記憶力向上効果
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24790540
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
赤石 樹泰 武蔵野大学, 薬学研究所, 講師 (90386384)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 海馬 / 記憶 / アルツハイマー病 / 認知症 |
Research Abstract |
本研究は、研究代表者が発見した『新規クルクミン誘導体CNB-001の記憶力向上効果』の分子メカニズムを解明し、アルツハイマー病治療に有用な新しい分子ターゲット発見を目指すものである。 課題の初年度にあたる平成24年度は、急性海馬スライス標本や培養神経細胞を用いたin vitro実験を行い、CNB-001を神経に直接適用すると、どのような分子が活性化または抑制されるかをウエスタンブロット法により解析した。まず、CNB-001適用は、海馬の記憶形成に重要な役割を担うとされるシグナル分子CaMKIIを著しくリン酸化(活性化)させることが確認された。次に、CaMKIIの活性を制御すると報告されている幾つかのシグナル分子の変化を解析したが、これまでのところ有望な標的分子の同定には至っていない。まだ全ての候補分子の解析が完了していないので、引き続き検討を進めていく予定である。 一方、もしCNB-001が、これまでに報告されていない未知の記憶関連分子に作用してCaMKIIを活性化させているとしたら、前述のような従来の手法ではターゲット分子の発見が不可能と思われる。そこで、並行して別の方法によるアプローチも開始した。すなわち、CNB-001の構造活性を明らかにして、CNB-001の化学修飾によりプローブ化を図り、CNB-001が直接結合する未知分子を見つけ出すという方法である。現在、種々のCNB-001の構造類似化合物(CNB-001誘導体)を用いて構造活性相関の解明を急いでいる。これらの研究で得られた知見をもとに、CNB-001のターゲット分子同定に繋げていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題初年度(平成24年度)は、「おおむね、当初の研究計画・方法の通り実験を遂行できた」と考えられる。CNB-001の作用機序の完全な解明までには至っていないが、想定される様々なメカニズムの中でCNB-001が作用しうるターゲット分子の候補を絞り込むことができた。 また、多数のCNB-001誘導体を用いて、構造活性相関の検討が進んだことも評価できるポイントである。CNB-001のプローブ化が成功すれば、CNB-001のターゲット分子を直接同定できると思われる。 これらの実験を継続することにより、本研究の目的の1つが実現できると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究はおおむね順調に進んでいるため、今年度もまずは同様の検討を継続して進めていく予定である。具体的には、海馬スライス標本や培養神経細胞を用いたウエスタンブロット解析、またはCNB-001プローブ化等の手法により、in vitroでCNB-001のターゲット分子を同定する。 更に、アルツハイマー病(AD)の病態時におけるCNB-001の有効性とその作用機序を明らかにするために、ADのモデル動物を用いたin vivo実験にも研究を発展させる。行動学的検討により、CNB-001の経口投与によってADモデル動物の記憶力低下が改善されることを証明する。また、電気生理学的検討により、海馬における記憶形成の分子過程とされる長期増強現象(LTP)をin vivoで測定し、CNB-001経口投与によってAD動物のLTP低下が改善されることも確認する。更に、阻害薬を用いた薬理学的検討や、ウエスタンブロット・免疫組織化学的検討を、上記の行動学的・電気生理学的検討と組み合わせて行い、ADにおけるCNB-001の作用機序を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度研究費の未使用額(繰越額)は僅か\8,439であり、計画的に使用できていると思われる。このことをふまえ、今年度の研究費は以下のように使用する計画である。 武蔵野大学薬学研究所では、動物飼育施設や行動実験施設、電気生理学実験装置、共焦点レーザー顕微鏡、ウエスタンブロット解析装置などの研究設備が充実している。そこで、本課題を遂行するための試薬(抗体や市販のキット、種々の阻害薬など)、消耗品(ビーカーやフラスコ、電気生理学実験用の電極など)、実験動物(マウスやラットなど)に、主に研究費を使用する。 また、研究成果が得られたら、速やかに学会発表や学術論文として公表するため、学会出張の旅費などにも一部の研究費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)