2012 Fiscal Year Research-status Report
アドレノメデュリンの炎症性腸疾患治療薬としての実用化へ向けた基盤研究
Project/Area Number |
24790711
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
芦塚 伸也 宮崎大学, 医学部, 助教 (90468033)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アドレノメデュリン / 潰瘍性大腸炎 / 炎症性腸疾患 / 粘膜再生 / 生理活性ペプチド / 新規治療薬 |
Research Abstract |
【背景】アドレノメデュリン(AM)は組織虚血障害により誘導され、強力な血管拡張作用を有する生理活性ペプチドである。AMは心血管保護作用の他、血管新生作用、抗炎症作用、抗菌作用などの生理機能を有し、炎症性腸疾患モデル動物に対し腸炎改善効果を有する。我々は当院倫理委員会承認の下、潰瘍性大腸炎(UC)患者に対するAM持続静注療法(臨床研究)を開始した。 【方法】[対象] 難治性UC(ステロイド抵抗性、依存性)で、かつ免疫調整剤・生物学的製剤の使用が不適当な症例。[投与法] AM 1.5 pmol/kg/min、8時間/日、14日間。[主要評価項目] Disease activity index (DAI)。改善:30%以上かつ3ポイント以上減少、寛解:2以下かつすべてのサブスコアが1以下。 【結果】[背景] 症例:8症例(10回)、年齢中央値:61歳(37-68歳)、性別:男性4名・女性4名、病型:全大腸型 4名、左側結腸型 4名、入院時重症度:重症4名・中等度 4名、AM療法直前の重症度:重症 2名、中等症 6名。[評価]8例中1例途中脱落。AM療法2週目の改善率62.5%、12週目の寛解率62.5%。脱落例を除くAM投与直前DAI: 8.9±1.3、AM療法2週後DAI 4.7±2.3、12週後DAI 1.0±1.2。[内視鏡所見] 8例中6例で炎症改善傾向が得られ、潰瘍の縮小~瘢痕化が認められた。著効例では広範囲潰瘍病変は網目状に瘢痕化した。 [有害事象] 軽度の血圧低下と心拍数上昇以外の明らかな有害事象は認めなかった。 【総括】UCに対するAM療法は有効と考えられた。AMは生理活性ペプチドであり安全性が高く、抗炎症作用に加え、血管新生、血流改善という既存の治療とは異なる機序を有しており、新規治療薬として発展しうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、1)炎症性腸疾患患者におけるAMの病態生理学的意義、2)炎症性腸疾患患者に対するAM投与とその臨床効果の検討、3)AM投与患者における腸管粘膜(粘膜修復)の病理組織学的検討であるが、まず1)に関しては、当研究室において血漿アドレノメデュリンの測定体系が向上し、AM投与前後におけるAM血中濃度の測定が進んでいる。また、本臨床試験(アドレノメデュリン持続静注試験)参加患者はもちろんの事、通常の治療目的に入院した炎症性腸疾患患者のアドレノメデュリンや他のバイオマーカーに関し広く検討が可能となったため、炎症性腸疾患のみならず、消化管領域疾患患者におけるAM測定を広く進めている。2)に関して、少数づつではあるが症例が集積されており、更なる集患のため今後は治験や先進医療への移行を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
1、企業との産学連携のもと、治験への移行を画策中である。 2、企業との連携が実現できない場合は、先進医療への申請を検討する。 3、これらの体系を整えた後、他大学との共同研究を進める(現在、いくつかの大学との協議が進み、協力の意向を頂いている)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1、AMをはじめとする血中炎症マーカー測定に関わる諸経費 2、AM持続静注試験に関わる諸経費 3、論文化、学会発表(今秋の消化器病学会総会で報告予定)費用 4、企業連携のための諸経費(出張、資料作成など)
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Research Products
(5 results)