2012 Fiscal Year Research-status Report
セリアック病の臨床実態調査と、その経過に関する前向き検討
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24790726
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
渡邉 知佳子 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 助教 (90365263)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 腸管免疫 |
Research Abstract |
欧米の診断アルゴリズムに従って、まず血清抗体検査、陽性者にはつぎに病理組織診断とHLA検査を行った。欧米で標準的に使用されている血清抗体検査試薬の入手は困難であったが、準じるsensitivity/specificityの試薬を購入して実施した。倫理委員会の承認を得て、当科通院患者の血清を検査したところ、我が国でも欧米とほぼ同率に血清抗体陽性者が存在する結果であった。病理組織検査を行うにあたっては、診断の正確を期すために、経験の多い病理医に助言を頂きながら、慎重に検査をすすめた。その結果、疑診例はあったが、診断が確定した症例はなかった。本研究におけるHLAの結果は欧米に比べ、疾患感受性のHLAの分布は低いものの、10%以上の存在が確認された。血清抗体陽性者における病理学的診断確定者の率が欧米にくらべ低いのは、HLAの分布の違いによると示唆された。しかし、10%以上の疾患特異性HLA保有者・病理学的疑診断者が存在することについての解釈や臨床経過は、今後の検討課題となっている。 近年では、従来のセリアック病感受性HLA以外にも、疾患特異的なHLAや遺伝子の関与が指摘されている。アジア太平洋地域のセリアック病会議で発表した際にも、地域によって疾患感受因子が異なる可能性も指摘され、この点は更に詳細な検討を要すると考える。また、近年欧米では、セリアック病を含むグルテン不耐性疾患の概念を見直す必要性が指摘されており、本研究でもさらに、グルテンや小麦の摂取と症状、また血清抗体の意義について前向き検討を進める予定である。 本研究では、炎症性腸疾患患者も対象としているため、腸管免疫学的な見地からの検討も同時にすすめたいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我が国におけるセリアック病の臨床実態調査を、当院において、血清抗体検査と病理組織検査でおこない、血清抗体陽性者は存在したが、病理組織診断が確定した患者は現在までのところないという結果を得た。この結果を日本消化器病学会をはじめとする国内の学会や研究会、国際学会で発表し討議の内容を反映して、現在論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の発表を国際学会で行ったところ、日本からのセリアック病についてのデータの蓄積と報告に対する要望が高かったので、今後も同手法を見直した上で、さらにデータの蓄積をすすめる。とくに組織学的疑診者については、近年指摘されている新規セリアック病感受性HLA、遺伝子について解析も予定したい。 血清抗体陽性者について、Potential celiac disease、またはグルテン不耐症であるの可能性があるため、food diaryを活用して、臨床経過(血清抗体・病理組織を含む)の前向き検討を進める予定であり、現在進行中である。 免疫学的検討についても、免疫組織染色などの手法でとくに粘膜透過性と免疫担当細胞のabberant migrationの見地から解析を加えたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
セリアック病特異的 ①血清抗体 ELISAキット、②間接蛍光抗体法 検査、③HLA検査試薬、 ④組織免疫染色抗体試薬、⑤PCR試薬 など。
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Research Products
(5 results)