2013 Fiscal Year Research-status Report
カルパイン・カルパスタチンシステムの制御によるあらたな腹部大動脈瘤治療戦略の構築
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24790784
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
宮崎 拓郎 昭和大学, 医学部, 助教 (80398693)
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Keywords | 腹部大動脈瘤 / 血管内皮細胞 / カルパイン / プロテアーゼ / 血管新生 |
Research Abstract |
本年度はマウス動脈瘤モデルおよびヒト大動脈血管内皮細胞の機能解析を行った。 (1)マウスにおける解析 高脂肪食を負荷したLdlr欠損マウスにアンジオテンシンII(AngII)を持続投与することで腹部大動脈に動脈瘤を惹起したところ、カルパスタチン(CAST)発現は瘤の形成に伴い大幅に下方制御されることが明らかとなった。生理的条件下の大動脈においてCAST発現は血管内皮細胞に局在するので、血管内皮細胞特異的CASTトランスジェニックマウス(CAST-EC-Tgマウス; line20)およびコントロールのLNL-TgマウスをLDL受容体欠損背景とし、前述の方法で腹部大動脈瘤を惹起した。CAST-EC-TgマウスではLNL-Tgマウスと比較して瘤破裂による死亡率の有意な低下が認められたが、腹部大動脈の径の縮小は認められなかった。CAST-EC-Tgマウスの動脈瘤はLNL-Tgマウスと比較して血色が悪い傾向があったため、瘤における外膜新生血管検出した。LNL-Tgマウスの新生血管はSMA陽性壁細胞およびcollagenIV基底膜による被服が認められなかったが、CAST-EC-Tgマウスの外膜新生血管では両者が確認された。したがった、CAST-EC-Tgマウスの外膜新生血管は成熟が進行し、血液が血管壁に漏出しにくくなった可能性がある。 (2)ヒト大動脈血管内皮細胞(HAECs)の解析 siRNAによるCASTを下方制御が内皮機能における炎症性サイトカイン応答にどのような影響を及ぼすかを中心に解析を行った。その結果、CASTの下方制御は特にIL-6刺激による責任遺伝子の発現誘導を増強するが、TNF-α、IL-4ならびにIL-1βの反応性には影響を及ぼさないことが明らかとなった。薬理学的手法を用いて経路の検索を行ったところ、CASTの喪失によりJAK/STAT系の亢進が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)マウスにおける解析 マウスの作出に成功し、腹部大動脈瘤の表現型の確認を行うことができた。同時にCAST喪失が血管新生のシグナルに関与する可能性を見出した。 (2)ヒト大動脈血管内皮細胞(HAECs)の解析 カルパイン/カルパスタチンシステムが内皮細胞内で炎症性応答に関与する新たな証拠を掴んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)マウスにおける解析 本年度の検討では、CAST-EC-TgマウスではLNL-Tgマウスと比較して瘤破裂による死亡率の有意な低下が認められたが、腹部大動脈の径の縮小は認められなかった。径の縮小が認められなかった理由としては、CASTの発現が不足している可能性があると考えられる。次年度ではCASTを高発現するTgマウス(line21)の解析を行う。また、CAST喪失が血管新生のシグナルに関与する可能性があるので、血管新生関連疾患の病態モデル(癌移植モデル、酸素誘導網膜症モデル)において、内皮細胞へのCAST導入が及ぼす影響について検証を行う。 (2)ヒト大動脈血管内皮細胞(HAECs)の解析 CAST喪失がJAK/STAT経路の亢進に関与する可能性が考えられる。この点について、カルパインの作用点(基質)を含めてメカニズムの検証を行う。
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