2012 Fiscal Year Research-status Report
プロテインCインヒビターによるアノイキス誘導に基づく新規腎癌治療法の開発
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24790865
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
秋田 展幸 鈴鹿医療科学大学, 医用工学部, 助教 (70597327)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 癌 |
Research Abstract |
プロテインCインヒビター(PCI)は、セリンプロテアーゼインヒビター(セルピン)ファミリー蛋白質の1つであり、血液凝固、癌細胞の増殖、浸潤・転移、および血管透過性の制御など、様々な生体反応に関与する。我々はこれまでに、PCIは主として肝臓や腎臓などで発現され、腎癌では非癌部に比較して著しくその発現が低下していること、PCIは様々な癌細胞の増殖、転移をそのプロテアーゼインヒビター活性非依存的に阻害すること、およびPCIによる転移の抑制にはアノイキス抵抗性抑制が関与すること、さらにはPCIがHGFAの阻害を介してHGFの活性化を制御することから、PCIが活性型HGFの生成の抑制を介して癌細胞の増殖を抑制する可能性を示唆してきた。本年度は、PCIによる活性型HGF生成の制御に焦点を絞り、HGFにより肝細胞におけるProHGFA (HGFA前駆体)やPCI発現が影響されるかを検討した。まず初めに、HGFの初代培養ヒト肝細胞あるいはヒト培養肝癌 (HepG2) 細胞によるPCI およびProHGFAの産生とmRNA発現に及ぼす影響を検討した。その結果、活性型HGFは初代培養ヒト肝細胞およびHepG2細胞におけるProHGFA産生には影響を及ぼさないが、PCIの産生をその濃度依存性に低下させることが明らかになった。さらに、活性型HGFはHepG2細胞におけるPCImRNA発現についても抑制することが明らかになった。各種細胞内シグナル伝達因子の阻害剤を用いた検討により、活性型HGFによるPCIの産生低下は、MEKインヒビターにより抑制されることが明らかになった。以上の結果から、PCIにより活性型HGFの生成が阻害されるが、逆に活性型HGFは、肝臓におけるPCIの発現低下を惹起することにより、活性型HGFによる癌細胞の転移の促進に有利な環境をつくる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、本年度は腎癌細胞上のアノイキス抵抗性因子の同定を予定していたが、次年度に予定していた、本研究における最重要検討課題である原発性腎癌モデルにおける宿主PCIの癌細胞の増殖・転移に及ぼす影響を検討するための予備検討を前倒して実施し、その結果、活性型HGFは肝細胞におけるPCI発現を低下させることにより、活性型HGFによる癌細胞の増殖・転移を促進することが明らかになり、達成度としては十分であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
腎癌細胞は他の癌細胞に比較してc-Metの発現量が高いことが知られているので、来年度は、まず、宿主PCIの癌細胞の増殖・転移に及ぼす影響を検討すると共に、その増殖・転移における活性型HGFの関係性を明らかにし、その点が明らかになった暁には、PCI遺伝子導入マウスと野生型マウスとで原発性腎癌モデルマウスを作成し、そのマウスにおける血漿PCI、HGFA-PCI複合体、および活性型HGF濃度を測定し、それらの腎癌の増殖・転移との関係性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、主として担癌マウスおよび腎癌モデルマウスを用いてin vivoでの実験を行う予定であり、研究費は、実験動物の飼育、管理費、及び種々の血漿中因子を測定するために使用する試薬・消耗品の購入に使用するとともに、研究成果の発表と情報収集を行うための国内外の研究会や学会への参加のための費用、論文発表のための経費として使用させていただく予定である。
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Research Products
(3 results)