2012 Fiscal Year Research-status Report
新規バクテリオファージゲノム由来ヌクレオシドの抗ウイルス活性の可能性検討
Project/Area Number |
24791025
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
内山 淳平 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (20574619)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | bacteriophage / virus |
Research Abstract |
ウイルス感染症に対する化学療法では、ウイルスの複製を阻害させる核酸類似体が使用されている場合がある。中でも、ヌクレオシドの構造をベースにした核酸類似体が高頻度で使用されている。しかしながら、現在、核酸類似体に対しても耐性ウイルスの出現などが報告されている。また、既存の核酸類似体の基盤となるライブラリーも限界があること、新規核酸誘導体の基盤となるリソースに関しても制限があるため、新規の核酸誘導体のリソースの探索は、将来の当該分野の研究開発に対して極めて有効であると考えられる。一部のバクテリオファージ(ファージ)は、様々な修飾された核酸塩基を有しており、新規の核酸誘導体のリソースに十分なりうる可能性を有している。それゆえ、本申請研究では、ファージの新規ヌクレオシドの捜索を行い、抗ウイルス作用の検討を目的とした。 本年度は、ウイルス感染症に対する化学療法で使用される核酸誘導体(ヌクレオシド類似体と称するヌクレオシドの構造を大幅に改変しない程度の改変がなされた化合物)候補分子となりうる候補分子のスクリーニングを行った。特に、ウイルス分類学的に新規核酸を有すると期待されるファージや新規ファージのゲノム核酸塩基の分析を行った。 これまでのウイルス分類学やファージ生物学的知見を回顧し、新規ヌクレオシドをゲノムDNAに含有すると予想したファージ6株を選定した。ゲノム核酸をヌクレオシドへ分解し、解析を行った。その結果、ファージ4株は通常の核酸塩基を有した。残りの2株はチミンの代わりにデオキシウラシル(dU)を有していた。残念ながら、有効な核酸誘導体の候補となる核酸塩基の発見には結びつかなかった。しかしながら、ファージ分類学上の研究成果(Archive of Virology, 157(8):1587-92, 2012)、また、通常毒性を示すdUを有する生物を発見した(論文投稿準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、ファージ株6株(Enterococcus phage φEF24C、Staphylococccus phage K、Staphylococcus phage S6、Escherichia coli phage lambda、Bacillus phage PBS1、Serratia phage KSP100)由来のヌクレオシド分析を行った。まず、はじめに、ナノ液体クロマトグラフィー・精密質量分析器で標準ヌクレオシド(デオキシアデニン, A;デオキシグアノシン, G; チミジン, T; デオキシウリジン, dU;デオキシシチジン, C)の分離・分析を行い、測定条件の設定を行った。次に、ファージを大量培養・精製を行い、ファージ由来ゲノム核酸を抽出した。ゲノム核酸を酵素によりヌクレオシドへ分解し、ナノ液体クロマトグラフィー・精密質量分析器で測定を行った。その結果、4種類のファージ(phages φEF24C、K、KSP100、lambda)では、通常のDNA(A, T, G, C)であった。残りの2種類(phages S6、、 PBS1)は、dUを有するDNA(A, dU, G, C)であることが明らかとなった。研究責任者は、これらの結果を分類学的・分子生物学的に考察し、ウイルス分類学での研究成果として発表した(Archive of Virology, 157(8):1587-1592, 2012)。また、これまで毒性を示すとされていたdUを保有する生物を発見した(論文投稿準備中)。しかしながら、本申請研究の主題である新規ファージヌクレオシドの発見には繋がっていないため、これまでの研究達成度は、十分とはいえない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、保有ファージから有用な核酸誘導体は見つかっていない。それゆえ、今後、保有・新規分離ファージのゲノム核酸の分析、また、本研究課題で解析対象はファージゲノム核酸であるが、dU保有ファージの細菌内での核酸生合成時に生じるヌクレオシドに関して核酸の分析を進めることを予定している。 また、昨年度のファージゲノム由来ヌクレオシドの分析において、副産物的に、様々な新規の生物学的知見が得られた。dU保有ファージは、これまでその分類すらなされていなかったため、ファージゲノム解読を行った結果、遺伝学的にも新規のウイルス属を形成すると考えられる。それゆえ、このような新規ファージが分離できたこと、また、ゲノム解読が成功したことを原著論文として報告を行う。 更に、他の研究者が、現在、dU保有ファージの分子メカニズムに関して学術的重要性を認識している。それゆえ、dU保有ファージの分子生物学的解析(転写、あるいは複製の分子機構、特に、それぞれの機構に関わる酵素(RNA polymerase、DNA polymerase)のdU認識機構の解析など)を共同研究で推進する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、精密質量分析器の故障や標準ヌクレオシドのデータ採取等に時間を要した実験上の問題や、教育業務や他の共同研究への比重が大きくなってしまったことにより、本研究を遂行する時間に大きな制約が生じた。それゆえ、本年度は、十分有効に研究費を使用することができず、本年度で予定した実験を引き続き次年度に行う。それゆえ、研究費の繰越を行う。
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Research Products
(20 results)
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[Presentation] C型ボツリヌス毒素変換ファージのゲノム情報を基盤とした偽溶原性メカニズムの解析2013
Author(s)
阪口 義彦, Oliva Maria A., Martin-Galiano Antonio J., Andreu Jose M., 阪口 政清, 内山淳平, 小椋 義俊, 山本 由弥子, 鈴木 智典, 織田 華絵, 津田 千秋, 松崎 茂展, 林 哲也, 小熊 惠二
Organizer
第35回日本分子生物学会年会
Place of Presentation
福岡国際会議場・マリンメッセ福岡(福岡)
Year and Date
20130318-20130320
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