2012 Fiscal Year Research-status Report
分泌性因子がもたらすミトコンドリア機能変化と放射線抵抗性獲得機構の解明
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24791317
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
菓子野 元郎 大分大学, 医学部, 准教授 (00437287)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | バイスタンダー効果 / ミトコンドリア / 放射線抵抗性 |
Research Abstract |
本年度の研究において、放射線照射による生成される「分泌性因子」が、細胞集団としての生存シグナルを活性化するか否かについての検討が行われた。細胞はHeLa細胞を用いて解析が行われた。研究の仮説として、「放射線照射細胞から分泌される因子は、ミトコンドリアの機能変化を介して、細胞集団の生存シグナルに影響を及ぼすのではないか」ということを考えた。はじめに、これを検証するための実験系確立を行った。その結果、4 Gyのガンマ線照射を行い、3日後に照射細胞の培養上清を回収し、別に用意したHeLa細胞へ処理した結果、対照群(非照射細胞の培養上清を処理)に比べ、ミトコンドリア由来のスーパーオキシドラジカルが増加することが分かった。このことから、この手法は仮説の検証に有効な手法であると考えた。次に、本手法で分泌性因子の生存シグナルへの影響を調べたところ、コロニー形成率の増加が有意に認められ、生存シグナルの活性化が引き起こされている可能性が示唆された。以前に実施したCHO細胞を用いた解析から、ミトコンドリア由来のスーパーオキシドラジカルの増加はミトコンドリア機能と関連することから、照射細胞由来の分泌性因子は、ミトコンドリア機能変化を介し、生存シグナルの活性化につながる可能性が示唆された。次に、生存シグナルとして知られているAPMKの活性化を調べた。同様の手法で分泌性因子の影響を調べたところ、放射線照射細胞由来の培養上清において、対照群よりわずかにAMPKのThr172のリン酸化が亢進していることがわかった。AMPKの活性化は細胞種によって違うということが先行論文の報告から示唆されるので、数種類の正常細胞とがん細胞株を用いて、同様の解析を拡大しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリアの機能変化をとらえる実験手法が十分に確立できていることが分かった。今年度の実験で用いたHeLa細胞でもミトコンドリアのスーパーオキシドラジカルが放射線照射により生じる分泌性因子の作用で増えるという現象をとらえている。このことから、HeLa細胞により今年度確立した手法は今後の実験計画を遂行するうえでも問題ないと考えている。しかし、DNA二重鎖切断の修復効率の解析については、まだ予備検討の段階であるので、全体としてはおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に書いた内容のとおり、研究をすすめる。24年度に新たな発見としてAMPKシグナルの活性化が見いだされたので、このシグナルとの関連性も加えて解析していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
140円の旅費が繰り越されているが、予定通りに研究費を使用する。
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