2013 Fiscal Year Research-status Report
マウスモデルにおける低用量放射線および樹状細胞を用いた放射線免疫療法の確立
Project/Area Number |
24791323
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
河合 辰哉 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70597822)
|
Keywords | 放射線治療 / 免疫療法 |
Research Abstract |
目的:マウス腫瘍モデルの確立と放射線照射によるマウス免疫系細胞のpopulation解析を引き続き行うとともに脾臓細胞中リンパ球に発現する各種サイトカインの解析を行った。 方法:①マウスC57/BLに対してマウス上皮系悪性腫瘍(SCCVII)を大腿部皮下に接種し担癌マウスモデルとし,非腫瘍移植マウスをコントロールとして8週齢時にX線全身単回照射(500 mGy,50 mGyおよびコントロール)後の免疫系細胞の集団解析を行った。8週齢時に脾臓,胸腺およびリンパ節を摘出した。それぞれより浮遊細胞を調製し,蛍光標識抗表面抗原抗体(CD3,CD4,CD8α,B220,Dx5,CD44,CD62L,IgM,CD25)および制御性T細胞の特異的マーカーである細胞内抗原Foxp3を用いて標識しフローサイトメトリーによる解析を行った。②同時に脾細胞よりmRNAを抽出し,サイトカイン(IL2,Il6,Il17,Il22,IFNγ,IGFβ)の発現量をReal time PCRにより解析した。 結果:①50 mGy照射群で,脾臓およびリンパ節においてCD44-CD62L+とCD44+CD62L-の逆転(CD62L+の相対的上昇)が見られた。50 mGy,500 mGy照射群で,脾臓,リンパ節におけるCD3+Dx5+およびCD3-Dx5+の低下が認められた。500 mGy群で脾臓におけるCD4+CD25+の比率上昇が認められ前年度の実験結果と矛盾せず,再現性が確認された。②担癌モデルおよびコントロール群において,照射量による生存率および細胞集団の変化に有意差は見られなかった.③技術的なトラブルと思われる問題により,安定したmRNA抽出およびPCR解析結果が得られず,サイトカイン発現量については現時点で有効なデータが得られていない。 結論:低線量照射によりマウスのリンパ球系細胞集団の一部,特にNK細胞,NKT細胞に変動が認められたが,腫瘍の有無や照射量による差異は有意なものは認められなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定通り担癌モデルを用いてマウス免疫系細胞の表面マーカーによる集団解析を施行した。当初の計画では,これら免疫担当細胞の産生するサイトカインについても解析を行う予定であったが技術的,人的資源の制限によりなお現在進行中である。原因としてサイトカイン解析においてRNAの抽出,real time PCRにおいて適切な細胞数の決定や試薬の調製で最適な条件を網羅的に検索する必要があったことが挙げられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続きマウス免疫担当細胞を用いて表面マーカー解析,サイトカイン解析を行い,母集団を増やして腫瘍接種群と非接種群での違いや照射線量による変動を観察し再現性を確認する。具体的には,NK細胞,NKT細胞をはじめとする,放射線感受性が高いと考えられる細胞およびこれらに影響を与えると考えられるCD4陽性Th細胞およびCD25+Foxp3+制御性T細胞を対象としたフローサイトメトリーによる細胞集団解析,また,細胞性免疫や液性免疫に関与するサイトカイン産生についてreal time PCRを用いた発現量解析を引き続き行っていく予定である。 次に,マウス樹状細胞の確立のための予備実験として,マウスの下肢より骨髄細胞を回収し,その骨髄細胞をin vitroでGM-CSF+IL-4で刺激し未熟樹状細胞を誘導する。さらに,PGE2+OK432で成熟樹状細胞に分化させ,得られた樹状細胞の質について表面マーカー(CD11c,B220,CD8α,CD80,CD86、CD40,CD54,MHC-I,MHC-II)やサイトカイン(TNFα,IL-12,IL-10)を調べ,Th1を誘導できる樹状細胞の作成を試みる。さらに次年度以降の予定としては,研究計画に従って樹状細胞を併用した放射線療法における抗腫瘍効果の検討,各種ノックアウトマウスを用いた,本治療法における生体内免疫系環境の変化の特徴付けを行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フローサイトメトリー解析用ソフトウェアを購入予定であったが,本年度は機器操作用のソフトウェアで代用したため. 概算としてはPCR,RT-PCR関連試薬として引き続き200,000円,フローサイトサイトメトリ解析ソフトウエアとして400,000円,マウス購入費用50,000円,ピペットチップ等の消耗品として20,000円,旅費として200,000円程度を見込んでいる.
|