2014 Fiscal Year Research-status Report
マウスモデルにおける低用量放射線および樹状細胞を用いた放射線免疫療法の確立
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24791323
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
河合 辰哉 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70597822)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 低容量放射線 / 免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:前年度に引き続きマウス腫瘍モデルを用いて放射線照射によるマウス免疫系細胞のpopulation解析を行った. 方法:①マウスC57/BLに対してマウス上皮系悪性腫瘍(SCCⅦ)2x105個を大腿部皮下に注射後,低用量での放射線照射を行い,腫瘍生着率および生存率を比較した.②前年度のデータをconfirmするため,非腫瘍移植マウスの免疫系細胞の集団解析を行った.7週齢のマウスC57/BLに対してX線の単回全身照射(500 mGy,50 mGyおよびコントロール)を施行し8週齢時に脾細胞を調整し,フローサイトメトリーによる解析を行った.また,今回制御性T細胞(Treg)についても細胞内染色を行ってFoxp3陽性集団を解析した.③次に,脾細胞中リンパ球のサイトカイン産生(TNFα,IL-12,IL-10)を解析するために,mRNA抽出,Real time PCRを施行した. 結果:①500 mGy,50 mGy,およびコントロール群ではいずれも腫瘍生着率に有意差はみられなかった.500mGy照射群で生存期間の短縮が見られた.②500 mGy 50 mGy照射群で,脾臓およびリンパ節においてCD44-CD62L+とCD44+CD62L-の逆転(CD62L+の相対的上昇)が見られた.50 mGy,500 mGy照射群で,脾細胞中NKおよびNKTの低下が認められた.両群で脾臓におけるTregの比率上昇が認められた.③サイトカイン産生については群内のデータのばらつきが非常に大きく,有意なデータが得られなかった. 結論:これまでの研究では低用量放射線照射は腫瘍生着率および生存期間に影響を与えなかった.しかし,低線量群においてnaïve T細胞が増えて,memory T細胞が減る事は「免疫能が上がった」と考えられ,低線量照射によって「がん抗原(がんワクチン)に反応しやすくなる」可能性を示唆するものと考えられた.一方で,低線量照射でもNK細胞が減少,Tregが上昇する傾向が見られ,これは腫瘍排除機構にとっては好ましくない反応と考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度に引き続きマウス免疫系細胞の表面マーカーによる集団解析を施行し,当初の予備実験データと矛盾しない結果が得られた.しかし当初の計画に従って,これら免疫担当細胞の産生するサイトカインについても解析を行ったが,群内データのばらつきが大きく, RNAの抽出,real time PCRにおける技術的側面,適切なプライマーの調整に問題があった可能性が考えられた.このためマウス樹状細胞の確立のための予備実験としての,骨髄細胞からの未熟樹状細胞の誘導実験は施行できなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きマウス免疫担当細胞を用いて表面マーカー解析を,腫瘍接種群と非接種群での違いや照射線量による変動を観察する.特に,今回明らかになったNK細胞集団およびTregのDynamicな変動を捕らえるため,照射後の時間経過を詳細に検討する.また,細胞性免疫や液性免疫に関与するサイトカイン産生については今後real time PCRを用いた方法が成功しない可能性も考え,技術的経験の多いフローサイトメトリーを用いた解析を行う.一方,近年腫瘍細胞の免疫回避メカニズムとして注目されているPD-1についても,今回抗PD-1抗体を研究に用いる機会を得たため,これをマウスに投与し,放射線照射を組み合わせて腫瘍生着率や生存率,脾細胞中リンパ球の集団解析を進め,生体内免疫系環境の変化の特徴付けを行うる予定である.有意な結果が得られた場合には将来的には臨床症例での解析に結び付けられる可能性があると考えられる. マウス樹状細胞の確立も進めていく予定である.マウス骨髄細胞をGM-CSF+IL-4で刺激し未熟樹状細胞を誘導,PGE2+OK432で成熟樹状細胞に分化させ,得られた樹状細胞の質について表面マーカー(CD11c,B220,CD8α,CD80,CD86,CD40,CD54,MHC-I,MHC-II)やサイトカイン(TNFα,IL-12,IL-10)を調べ,Th1を誘導できる樹状細胞の作成を試み,樹状細胞を併用した放射線療法における抗腫瘍効果の検討,免疫系環境の変化を解析する.
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Causes of Carryover |
実験の遅れにより本年度に必要な試薬をはじめとする消耗品の使用が少なかったことと,フローサイト解析ソフト(Flow Jo;400000円)の購入予定であったが本年度は購入せず,Flow cytometry装置に標準装備されているソフトウェアにて代用したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記フローサイト解析ソフトの購入費および必要試薬,実験動物購入費として計上する予定である.
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Research Products
(5 results)