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2012 Fiscal Year Research-status Report

大動脈解離の分子病態メカニズム解明:IL-6によるマクロファージ分化制御

Research Project

Project/Area Number 24791478
Research Category

Grant-in-Aid for Young Scientists (B)

Research InstitutionKurume University

Principal Investigator

大野 聡子  久留米大学, 医学部, 助教 (80569418)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2014-03-31
Keywords大動脈解離 / 血管 / 分子生物学 / マクロファージ / サイトカイン
Research Abstract

大動脈解離は大血管が破綻する致死的疾患であるが、病態の分子メカニズムはほとんど不明である。我々はマクロファージ特異的にIL-6系シグナルを亢進したマクロファージ特異的SOCS3ノックアウトマウス: mSOCS3-KOにアンジオテンシンIIを投与するとヒト解離をよく再現するモデルができる(Ang IIモデル)ことを発見し、解離発症メカニズムに注目して研究を行ってきた。その中で、野生型でも軽微な解離を発症していることがわかり、mSOCS3-KOで見られる解離は軽微な解離から重症化している状態であることを突きとめた。つまり、マクロファージIL-6系シグナルは解離発症ではなく解離の重症化に関与することを見いだした。
・局所マクロファージに対するmSOCS3-KOの影響
軽微な解離で組織学的に野生型とmSOCS3-KOを比較するとマクロファージの浸潤、IL-6系シグナル活性化は同程度で、期待したような組織的相違は見られなかった。浸潤したマクロファージの機能分化を調べるため、免疫染色での染め分けを試みたが適切な染色が困難で評価するまでに至らなかった。そこで生体からの摘出大動脈を用いたフローサイトメトリーをプロトコール確立から施行し、mSOCS3-KOでは炎症性マクロファージが、野生型では抗炎症性マクロファージが増加しているという結果を得た。これにより解離増悪の原因にマクロファージの機能分化が関与していることが示唆された。
・組織に対するmSOCS3-KOの影響
無処置の大動脈から軽微な解離までの4段階の大動脈組織で野生型とmSOCS3-KOの遺伝子発現を比較した。アンジオテンシンII刺激により、mSOCS3-KOでは早期から炎症応答に関わる遺伝子発現が亢進しており、筋収縮・細胞接着に関わる遺伝子発現が抑制されていることがわかった。これらの変化と解離との関連についてはさらなる解析が必要である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

申請当初はmSOCS3-KOでのみ解離を発症すると考えており、発症メカニズムを解明する目的で本研究を開始した。発症メカニズムがわかれば理論上は解離の予防が可能になるが、患者数が少ないため対象者特定や予防効率の面から臨床応用までのギャップが少なからず存在した。
発症メカニズムについて研究を進める中で野生型にもAng IIによる軽症解離が存在することがかわり、mSOCS3-KOで見られる解離は軽症解離から重症化したものであることが判明した。このことから本モデルは解離重症化モデルであると考え、重症化メカニズム解明に重点をおいた研究に方向転換した。
ヒト解離でも保存的治療後や術後に解離腔を残した症例で慢性期に重症化し外科的治療を要することがある。これまでは重症化メカニズムが不明のため予後を予測する方法も治療的介入方法もなかった。本研究により重症化のメカニズムが明らかになれば、末梢血単球・マクロファージのIL-6シグナルモニタリングによる病態診断法開発への応用などが期待され、期を失することなく適切なタイミングで適切な治療を提供することが可能となる。また次年度の計画により解離の重症化抑制の可能性が示されれば、すでに他疾患で臨床応用されているIL-6受容体中和抗体を用いた解離安定化療法へと治療の選択肢が広がる。
解離は突然死の症例を除けばほぼ確実に医療機関を受診することから対象者の特定も可能である。本研究で予想外にも増悪メカニズム発見の糸口がつかめたことは、臨床応用を目指す立場として当初の計画以上に進展していると言える。

Strategy for Future Research Activity

前年度の実験を継続してmSOCS3-KOによって変化したマクロファージ機能分化や組織の遺伝子発現について解析を深めるとともに、下記の実験を行い治療への応用が可能か検討する。
1)マクロファージ機能と細胞外マトリックス代謝の解析
培養マクロファージにリポポリサッカライドを投与すると炎症性マクロファージが誘導される。IL-6受容体中和抗体で内因性IL-6を抑制することで炎症性マクロファージから抗炎症性マクロファージへの分化スイッチが可能かどうか検討する。これら分化状態の異なるマクロファージと血管平滑筋を共培養し、分泌タンパクや遺伝子発現からマクロファージの機能が血管平滑筋の細胞外マトリックス産生能にどのような影響を与えるか調べる。
2)抗炎症性マクロファージ誘導による解離重症化の抑制
高齢マウスでAng IIモデルを作成すると高率に重症解離を発症する。このモデルにIL-6受容体中和抗体を投与してIL-6シグナルを抑制し、重症解離が減少するか検討する。また局所のマクロファージを解析し、培養実験と同様にIL-6シグナル抑制の有無が抗炎症性マクロファージ誘導に影響するか調べる。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

上述の実験を遂行するため、マウスの購入・飼育、各試薬などの消耗品費として研究費を使用する。またこれまでの成果を学会等で発表する際の旅費、論文投稿料としても予算を計上する。

  • Research Products

    (4 results)

All 2013 2012

All Presentation (4 results)

  • [Presentation] Macrophage IL-6 Signaling is Critical Involved in the Progression of Acute Aortic Dissection2013

    • Author(s)
      大野聡子、青木浩樹、西原通秀、古荘 文、平方佐季、西田憲史、安川秀雄、今泉 勉
    • Organizer
      第77回 日本循環器学会学術集会
    • Place of Presentation
      パシフィコ横浜/横浜
    • Year and Date
      20130315-20130317
  • [Presentation] Involvement of IL-6 in Pathogenesis of Abdominal Aortic Aneurysm2013

    • Author(s)
      大野聡子、青木浩樹、西原通秀、古荘 文、平方佐季、西田憲史、今泉 勉
    • Organizer
      第77回 日本循環器学会学術集会
    • Place of Presentation
      パシフィコ横浜/横浜
    • Year and Date
      20130315-20130317
  • [Presentation] マクロファージIL-6シグナル亢進は大動脈解離を発症させる2012

    • Author(s)
      大野聡子、青木浩樹、西原通秀、古荘 文、平方佐季、西田憲史、安川秀雄、今泉 勉
    • Organizer
      第35回日本高血圧学会総会 高得点演題
    • Place of Presentation
      ウェスティンナゴヤキャッスル 名古屋能楽堂/名古屋
    • Year and Date
      20120920-20120922
  • [Presentation] 大動脈瘤と大動脈解離におけるSTAT3経路の役割2012

    • Author(s)
      大野聡子、青木浩樹、西原通秀、古荘 文、平方佐季、西田憲史、安川秀雄、今泉 勉
    • Organizer
      第49回日本臨床分子医学会学術集会
    • Place of Presentation
      京都みやこメッセ/京都
    • Year and Date
      20120413-20120414

URL: 

Published: 2014-07-24  

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