2013 Fiscal Year Research-status Report
大動脈解離の分子病態メカニズム解明:IL-6によるマクロファージ分化制御
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24791478
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
大野 聡子 久留米大学, 医学部, 助教 (80569418)
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Keywords | 大動脈解離 / 炎症 / マクロファージ / サイトカイン / 血管平滑筋 / 細胞分裂 |
Research Abstract |
大動脈解離は大血管が破綻する致死的疾患であるが、病態の分子メカニズムはほとんど不明である。我々はマウス大動脈に負荷をかけて発症する顕微鏡的解離が、マクロファージ特異的にIL-6系シグナルを亢進したマウス(マクロファージ特異的SOCS3ノックアウトマウス: mSOCS3-KO)では肉眼的解離に増悪することを発見した。無処置の大動脈から顕微鏡的解離までの4段階の大動脈で発現している遺伝子を解析したところ、野生型と比較しmSOCS3-KOでは顕微鏡的解離を発症する前から細胞分裂に関わる遺伝子群の発現が亢進し、顕微鏡的解離発症後は炎症応答にかかわる遺伝子群の発現が亢進していた。さらに、遺伝的ヒト解離の原因として血管平滑筋の収縮タンパク異常が知られているが、負荷を与えたmSOCS3-KOで収縮タンパクの発現抑制が見られた。 このことより、組織学的に炎症細胞の集積が見られる顕微鏡的解離より以前に、mSOCS3-KOでは大動脈負荷によって解離が増悪する素地が形成されると考えられた。大動脈負荷に反応して細胞増殖を始める細胞種を明らかにするため、免疫蛍光染色による解析を進めている。 当該年度は平成25年8月1日から平成26年3月31日まで産前産後休暇を取得したため実質4ヶ月間の研究期間となった。この間に新たなモデルを作成し、細胞周期S期に取り込まれるBrdUを投与した。このモデルから大動脈を摘出してBrdUを染色してコントロールと比較することで、大動脈負荷によりどの細胞種で細胞分裂が亢進したかを明らかにすることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は産前産後休暇の取得により研究期間は実質4ヶ月であったが、平成26年度まで研究期間を延長し4月1日より復帰しすでに実験を再開している。延長した期間内には当初の研究計画を実施できる。
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Strategy for Future Research Activity |
大動脈負荷により解離が増悪するmSOCS3-KOでは、肉眼的解離に先立って、大動脈組織で細胞分裂、炎症応答が亢進していることが分かった。また、血管平滑筋の収縮タンパク合成に関わる遺伝子発現が抑制されていた。前年度の研究ではmSOCS3-KOではマクロファージが炎症性マクロファージに機能分化していることを明らかにした。これらを考え合わせると、大動脈負荷により平滑筋やマクロファージが細胞分裂しながら機能を変化させ、平滑筋では収縮タンパクの産生が抑制される形態へ、マクロファージでは炎症性へと変化し解離が増悪しやすい素地が形成されるのではないかと推測される。 1. 大動脈負荷と細胞分裂:現在行っている免疫蛍光染色による解析を継続し、大動脈負荷で細胞分裂が亢進する細胞種を特定する。 2. マクロファージ機能と平滑筋機能の解析:細胞分裂の亢進により、マクロファージや血管平滑筋がどのような機能を獲得または喪失しているか調べる。炎症性もしくは抗炎症性マクロファージと血管平滑筋を共培養して分泌タンパクや遺伝子発現を解析し、マクロファージの機能が血管平滑筋の細胞外マトリックス産生能にどのような影響を与えるか調べる。 3. 血管平滑筋機能と血管強度:大動脈を摘出して破断強度を測定し、mSOCS3-KOと野生型で血管壁の強度を比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
産前産後の休暇を取得(備考欄参照)し、4ヶ月間のみ研究活動を行った。 産前産後休暇により先送りした平成25年度の研究計画を実施するため、マウスの購入・飼育、各試薬などの消耗品費として研究費を使用する。またこれまでの成果を学会等で発表する際の旅費、論文投稿料としても予算を計上する。
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Research Products
(6 results)