2012 Fiscal Year Research-status Report
新たな幹細胞からのアプローチによる不育の分子機構に迫る研究
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24791732
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Research Institution | National Research Institute for Child Health and Development |
Principal Investigator |
佐藤 星子 独立行政法人国立成育医療研究センター, 生殖・細胞医療研究部, 研究員 (10623085)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 着床 / 不育症 / ES細胞 / キメラ形成能 |
Research Abstract |
発生を受精卵から一気通貫に捉えると、着床前後の胚で分化の運命付けが決定されていく最初のポイントである。着床直後の胚(エピブラスト;原始外胚葉)の分子制御の特性を解明していくことは、個体発生へと進む際のゲイトキーパー(Gatekeeper)を理解することである。着床後胚の発生が進まない不育症の原因に対して分子レベル理解を深めることが可能となる。分化運命が未決定である胚盤胞内部細胞塊由来の胚性幹( ES )細胞を対象に着床直後のエピブラスト由来幹(EpiS)細胞を用いて、分化の運命付けを分子レベルで解明していく。本研究によって着床前後の分化の運命付けに対する分子的背景を明らかに探ることにより不育症の分子メカニズム解明へ向けこれまでにない貴重な知見が得られる。適切に維持されたEpiS 細胞と対象にES細胞を用いて網羅的遺伝子発現解析を行った。分化方向に向かっている状態と幹細胞として維持される状態が共存するEpiS 細胞の分子レベルの特性を探った。また、S細胞(Naïve型)とEpiS 細胞(Primed型)との網羅的遺伝子発現解析とそのバイオインフォマティックス解析を行った。分化初期マーカー群に着目し、分化方向への運命付けの分子動態を明らかにし、分化初期マーカーシグナル系を抽出し、阻害実験からEpiS 細胞の幹細胞恒常性破綻と連動する分子あるいはシグナル系を明らかにする。これにより、着床後の胚のロスを分化の運命付けがされつつあるEpiS 細胞の恒常性破綻と捉える「不育症-幹細胞モデル」を構築し検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究遂行のために、細胞を培養するCO2インキュベーター、無菌操作のためのクリーンベンチ、試薬等保存のための冷蔵庫、細胞保存のための液体窒素容器および、−80℃フリーザーを備えている。また、細胞プロファイリングのためにタンパク質および遺伝子発現を解析するためのフローサイトメーター、PCR装置、DNAシークエンサー等も備えており、遅滞なく研究を進めることが可能であった。また、動物実験に関しても、飼育ブロックも割り当てられており、動物への移植実験についても何ら問題はなく遂行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
網羅的DNAメチル化解析 ES細胞とEpiS 細胞の比較及びEpiS 細胞の幹細胞恒常性破綻と連動する分子を中心にDNAメチル化の変動を捉える。DNAメチル化プロファイリングを行うことでエピゲノムの詳細な変化を捉え遺伝子発現調節とエピゲノム解析を行う。「不育症-幹細胞モデル」で全ゲノムのメチル化変動領域でのDNAメチル化の変動動態を捉える。着床後の胚ロスに対するDNAメチル化レベルでのアプローチを可能とする。 EpiS細胞薬剤付加試験 この段階までに「不育症-幹細胞モデル」の網羅的ゲノム、エピゲノム解析系を整備している。これに不育症治療に利用されている化合物の検証を行う。すでにES細胞を用いて薬の毒性検査システム(EST)を基盤に、EpiS 細胞を用いて薬剤スクリーニングテストを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養用試薬・器具、遺伝子解析用試薬、実験動物の購入に充当する。
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