2012 Fiscal Year Research-status Report
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24791961
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
住友 倫子 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50423421)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | レンサ球菌 / 上皮バリア |
Research Abstract |
A群レンサ球菌 (GAS; Group A streptococci) はヒトの咽頭炎や膿痂疹の起因菌として知られるが,時として,組織深部へ侵入し,軟部組織壊死や多臓器不全を伴う劇症型レンサ球菌感染症を惹き起こす.化膿性病変を伴うGAS感染症の病態から,GASが細胞間の接着と極性を担う分子を破壊し,正常上皮の恒常性を破綻させる因子を備えることが推測されている.本研究では,宿主上皮細胞間の接着分子を分解するGASのプロテアーゼを検索し,GASの上皮バリア突破機構との関連性について検討した. まず,いくつかのGAS臨床分離株の培養上清が細胞間接着分子であるE-カドヘリンおよびオクルディンを分解することを確認した.そこで,臨床分離株の培養上清を各種プロテアーゼ阻害剤で処理した後,E-カドヘリンおよびオクルディンの組換え体と反応させた.その結果,GAS培養上清による組換えE-カドヘリンおよびオクルディンの分解は,システインスプロテーゼ阻害剤により抑制されたことから,GASのシステインプロテアーゼSpeBが宿主細胞間接着分子の分解に関与することが推察された.また,SpeBが組換えE-カドヘリン細胞外ドメインのEC2・EC3間を分解することを明らかにした.GAS感染細胞におけるE-カドヘリンおよびオクルディンの分解はspeB欠失では観察されず,さらにspeB欠失株の上皮バリア通過能は野生株と比較して有意に低下した. 以上の結果から,GASは細胞間接着分子の分解により上皮バリアを突破し,その突破機構にはSpeBが関与することが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究において,A群レンサ球菌感染による宿主上皮細胞間の接着障害に着目し,菌体外プロテアーゼであるSpeBによる直接的な細胞間接着分子の分解機構を解明し,論文に成果を掲載することができた (Sumitomo et al. Journal of Biological Chemistry, in press).従って,本研究課題は順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
申請者はこれまでの研究において,A群レンサ球菌の溶血毒素の一つであるStreptolysin S (SLS) が本菌の細胞間隙を介した上皮バリア突破に関与し,宿主細胞内プロテアーゼであるカルパインの活性化と細胞間隙構成タンパクの分解を誘導することを明らかにした.平成25年度は,SLSと相互作用する宿主上皮表層分子を検索する.SLS受容体候補分子が挙がれば,SLS-受容体複合体によるカルパイン活性化シグナル伝達機構を,イムノブロット法,免疫沈降法およびRNA干渉法により解析する.さらに,細胞間接着障害への関与が推察された因子について,A群レンサ球菌による病態発症に及ぼす影響をマウス感染実験で検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を遂行する上で,必要に応じて研究費を執行したため,平成24年度の研究費に未使用額が生じた.しかし,研究計画に変更はなく,今年度は前年度の研究費も含め,当初の予定通りに研究計画を実施する.
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Research Products
(11 results)