2012 Fiscal Year Research-status Report
レーザー光刺激法を利用した顎運動関連ニューロンの脳幹内ネットワークの解明
Project/Area Number |
24791984
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
中村 史朗 昭和大学, 歯学部, 助教 (60384187)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 顎運動 / プレモーターニューロン / 三叉神経運動ニューロン / シナプス伝達 / ケージドグルタミン酸 |
Research Abstract |
顎運動の基本パターンは脳幹で形成され、介在ニューロンを介して三叉神経運動ニューロンへと送られる。これまで三叉神経運動ニューロンに顎運動指令を直接伝える最終介在プレモーターニューロンが脳幹網様体の様々な部位に豊富に存在していることが報告され、顎運動制御機構における重要性が考えられてきた。しかし様々な領域に存在するプレモーターニューロン群の機能的役割や存在部位による機能差異については不明な点が多い。そこで本研究では、ケージドグルタミン酸を組み合わせた系統的レーザー刺激法を用いて、様々な領域に存在するプレモーターニューロン群の脳幹内分布およびシナプス伝達機序を明らかにし、運動ニューロンへのシナプス伝達機序に部位特異性が存在するかどうかを多角的に解析することを目的とした。 本年度は、プレモーターニューロンの様々な存在領域にレーザー光刺激を行い、単一咬筋(MMN)および顎二腹筋運動ニューロン(DMN)に誘発されたシナプス応答様式を解析した。生後1~5日齢ラット脳幹スライス標本にケージドグルタミン酸を灌流投与した状態で三叉神経上核(SupV)、三叉神経主感覚核(PrV)、三叉神経間領域(IntV)およびPrV背側網様体(dRt)にレーザー光を照射し、誘発された電流応答をパッチクランプ法にて記録した。SupV、PrV、IntVおよびdRtのうちで2か所以上の刺激に対して、74%のMMN(14/19)および69%のDMN(18/26)でシナプス後電流が誘発された。また、GABAAおよびグリシン受容体拮抗薬存在下でも同様の誘発割合を示した。さらにMMNではSupV外側部の刺激によりバースト状のシナプス後電流がDMNよりも高い割合で誘発された。このような三叉神経運動ニューロンへの収束性入力は、多様な顎運動パターンの遂行に役立っている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時において、レーザー光刺激法によるプレモーターニューロン多領域からのシナプス伝達様式の解析を平成24年度の研究計画とした。生後1~5日齢ラット脳幹スライス標本を用いてプレモーターニューロンの様々な存在領域にレーザー光刺激を行い、単一咬筋(MMN)および顎二腹筋運動ニューロン(DMN)に誘発されたシナプス応答様式をパッチクランプ法により解析した結果、叉神経上核(SupV)、三叉神経主感覚核(PrV)、三叉神経間領域(IntV)およびPrV背側網様体(dRt)のうちで2か所以上の刺激に対して、74%のMMN(14/19)および69%のDMN(18/26)でシナプス後電流が誘発された。また、GABAAおよびグリシン受容体拮抗薬存在下でも同様の誘発割合を示した。さらにMMNではSupV外側部の刺激によりバースト状のシナプス後電流がDMNよりも高い割合で誘発された。以上の結果からこのような三叉神経運動ニューロンへの収束性入力は、多様な顎運動パターンの遂行に役立っている可能性があることが示唆された。したがって、申請時に計画したレーザー光刺激法によるプレモーターニューロン多領域からのシナプス伝達様式の解析が順調に進んでおり、おおむね計画は予定通りに遂行されていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究成果から、三叉神経運動ニューロンは複数のプレモーターニューロン存在領域から収束性の入力を受けていることが明らかとなったが、閉口筋および開口筋を支配する運動ニューロン間で応答性に差異があるのか、またプレモーターニューロン-運動ニューロン間のシナプス伝達にどのような神経伝達物質が関わるのかについていまだ不明である。そこで平成25年度は、申請時の計画通り、①レーザー光刺激に対する閉口筋および開口筋運動ニューロンの応答性の差異の解析、②プレモーターニューロン-運動ニューロン間のシナプス伝達様式の電流解析を計画する。それにより、それぞれのプレモーターニューロン領域が、顎運動パターンの形成過程において、どのような機能的役割を果たしているのかを解明できると期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に続き、ラット脳幹スライス標本作成に使用する実験動物の購入費、飼育費、さらに標本作成に必要な試薬、ガラス器具切削器具等の購入費として使用する。また、レーザー光刺激の際に用いられるケージドグルタミン酸が引き続き必要である。さらに開口筋および閉口筋運動ニューロンを標識するために蛍光色素tetramethyl-rhodamine lysineや形態学的検索に用いるbiocytinなどの試薬購入費として使用する。本研究の成果報告のため、学会での成果発表費用が必要である。また、研究成果を論文として発表するため投稿費用と英文校正費用を必要とする。
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