2012 Fiscal Year Research-status Report
TNF-αによる歯髄細胞の幹細胞化に着目した象牙質再生機序の解明
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24792084
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
上枝 麻友 岡山大学, 大学病院, 医員 (20625719)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | TNF-α / 歯髄細胞 / 幹細胞化 |
Research Abstract |
我々はこれまでにTNF-α刺激が歯髄細胞を未分化な細胞へと誘導するというリプログラミング機能を有している可能性を報告してきたが,未だそのメカニズムは明らかではない。今年度は,そのメカニズムを明らかにするため,1,TNF-αの歯髄細胞のアポトーシスに対する効果,2,歯髄細胞の保持する幹細胞特性に対するTNF-αの効果を検討した。 1,TNF-αの歯髄細胞のアポトーシスに対する効果の検討 TNF-α(10 ng/ml)を添加して2日間培養したヒト歯髄細胞(TNF-α添加群)の核を染色したところアポトーシス細胞に見られるような核の凝集や断片化は観察されなかった。また,カスパーゼ活性はTNF-α添加によりわずかに上昇するものの未処理群と比較すると大きな差は認められなかった。以上から,TNF-α10 ng/mlの濃度は,歯髄細胞においてアポトーシスを誘導しないものと推測された。 2,歯髄細胞の保持する幹細胞特性に対するTNF-αの効果の検討 TNF-αを10 ng/mlの濃度で添加し2日間培養した後,継代培養を行ったヒト歯髄細胞(以下TNF-α前処理群)を用い以下の実験を行った。初めに,間葉系幹細胞のマーカーであるSTRO-1,SSEA4の細胞免疫染色を行なった結果,TNF-α前処理群はコントロール群と比較してSTRO-1,SSEA4陽性細胞数が増加した。次に,FACSによる表面抗原動態解析を行なった結果,TNF-α前処理群において間葉系幹細胞マーカーのSSEA4,CD146の陽性率が上昇した。最後に,TNF-α前処理が幹細胞特性に与える影響を検討した結果,幹細胞の持つ特性であるコロニー形成能およびテロメラーゼ活性は,それぞれTNF-α前処理により上昇した。 以上の結果より,TNF-α刺激により歯髄細胞がより未分化な状態に誘導された,すなわち幹細胞様の性質を新たに獲得したことが推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,ヒト歯髄細胞に対するTNF-αの幹細胞化作用について,FACSや細胞免疫染色といった表面抗原解析,コロニー形成能,テロメラーゼ活性などを指標に評価し,TNF-α刺激により歯髄細胞がより未分化な状態に誘導されることを多面的に確認した。また,現在,そのメカニズムを明らかにするため, Si-RNAや中和抗体,各種シグナル経路のインヒビターを用いた阻害実験を行なっており,良好な結果を得ている。さらに,この研究の一部は,2012年6月の国際歯科医学会や,2012年9月の日本再生歯科医学会などで発表を行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
歯髄細胞の幹細胞化はTNF-α特異的な作用なのか,その作用は歯髄細胞特異的であるのかについて解明するために,種々の炎症性サイトカインを歯髄細胞に作用させ,検討する予定である。また,他の細胞種,例えば骨髄由来間葉系細胞や歯根膜細胞,歯肉線維芽細胞などにTNF-αを作用させ,それぞれの幹細胞化効果について,FACSおよび細胞免疫染色にて検討する。 また,TNF-α前処理を行った歯髄細胞を免疫不全マウス背部皮下にハイドロキシアパタイトとともに移植し,象牙質様硬組織形成能に対する効果を組織学的に検討する。 リプログラミングのカスケードの同定に関しても前年度から引き続いて実験を行い,作用機序解明を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
培養細胞を用いた分子生物学実験のために,培養関連の試薬,消耗品およびリコンビナントタンパクを購入する。また,同定された因子の動物への効果を検討するため,免疫不全マウスの購入も予定している。加えて,国内の学会に参加し最新の知見を得るとともに積極的な成果発表を行うための旅費としても使用する。なお、発注していた培養関連試薬の納品が遅れたため、1,999円の残高が生じ、これを次年度に繰り越す。
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Research Products
(4 results)