2013 Fiscal Year Research-status Report
低出力レーザーの作用機序に関する基礎的研究ーフリーラジカル制御による検討ー
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24792150
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
茂呂 祐利子 奥羽大学, 歯学部, 助教 (90433549)
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Keywords | 低出力レーザー / 血管内皮細胞 / 一酸化窒素 |
Research Abstract |
本研究の目的は、低出力レーザー照射がフリーラジカル制御に与える影響について検討し、レーザー治療におけるエビデンスを得ることである。本研究においては臨床応用を念頭に低出力レーザーの抗炎症作用に及ぼす影響についてフリーラジカル制御機構に焦点を当て、検討を行う予定である。本年度は昨年度に引き続き、レーザーの照射条件の検討、およびレーザー照射後の一酸化窒素(NO)の動態について検討を行った。 第一に、炎症時を想定したレーザーの照射条件の検討については、低出力レーザー照射時の血管内皮細胞の増殖率をLPS投与量をそれぞれ変更し、検討した。その結果、LPS濃度0,0.01,0.1,0.5,10μg/ml投与時においてレーザー照射後、増殖が促進した。このことから炎症時における低出力レーザー照射は非炎症時と比べ、治癒効果が高いことが示唆された。 第二に、炎症時における低出力レーザー照射後の一酸化窒素の動態について検討した結果、非炎症時と比べ、炎症時において血管内皮細胞は一酸化窒素合成酵素(NOS)のアイソフォームのうちn,e-NOSの他にi-NOSが発現していた。また、低出力レーザー照射によりi-NOS,e-NOSの発現が減弱した。i-NOSは他のNOSと比較し、NOを一過性に多量に産生し、superoxideと反応することで、peroxynitriteを生成し、強い細胞障害性を示すことが知られている。このことから、炎症時における低出力レーザー照射は、i-NOSの発現を減弱させ炎症性メディエーターである一酸化窒素の合成を減少させることで抗炎症効果を及ぼすことが示唆された。 本研究結果は、低出力レーザー照射におけるフリーラジカル制御機構のうち、フリーラジカルの一種である一酸化窒素の動態について明らかにしたという点で重要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年から課題としていたLPS濃度とレーザーの照射条件の設定については、細胞増殖率の結果から、培地へのLPS添加量は0.5μg/mlとし「炎症時」を想定した条件とした。また、レーザーの照射条件については、「治癒促進」を目的とした条件で「炎症時」も照射することとし、今後の実験に使用することとした。 また、本年度はレーザー照射後の一酸化窒素の動態について、培地中の一酸化窒素濃度についての生化学的検索、血管内皮細胞における一酸化窒素合成酵素三種類(n,i,e-NOS)の発現について免疫組織学的に検索を行った。これは本研究の3つの柱のうちのひとつであり、この結果を基に来年度に行う活性酸素合成酵素の結果を含めてフリーラジカル制御機構における関係性を考察する予定である。 フリーラジカル定量の条件については、ほぼ確立されたことから実験はおおむね順調であると考えられ、今後、一酸化窒素合成酵素の検索と同様の手法で、活性酸素合成酵素、消去酵素等についても検索する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は活性酸素の動態をテーマに研究を進める。 第一に活性酸素合成酵素(Nox-1,2,4)ならびに活性酸素消去酵素(SOD)の免疫染色を行う予定である。 第二に培地中に含まれる活性酸素消去酵素濃度をキットを用いて定量し、免疫染色の結果と比較、検討する予定である。 活性酸素の動態については当初の計画ではキットを用いて定量する予定であったが、定量用の試薬が高額であり、申請予算の削減ならびに消費税増税等の理由により、当初の計画を実行することが困難となった。低出力レーザー照射後の活性酸素の動態については文献によりある程度の推測が可能なこと、活性酸素の他にもperoxynitriteについて来年度定量するための予算を確保するためにも今期は活性酸素については形態学的な検索にとどめることとした。 最終年度は活性酸素消去酵素とperoxynitriteの合成について検索を行い、結果についてとりまとめを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度の実験計画の一部変更に伴い、使用する消耗品について当初の計画に変更があったため。 研究費の内訳としては、細胞培養における消耗品、タンパク測定用のキット、免疫染色に使用する抗体、試薬等の消耗品に使用する。
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