2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24792216
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
栗尾 奈愛 岡山大学, 大学病院, 医員 (80622141)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | IGF-1R |
Research Abstract |
インスリン様成長因子 (insulin-like growth factor;IGF)受容体は様々な癌細胞で高発現しており,IGF-1の結合によるシグナルで細胞生存,増殖経路を刺激し,腫瘍の浸潤増殖に関与している。癌の骨浸潤・骨破壊における腫瘍増殖は破骨細胞性骨吸収による骨基質分解により骨基質中に豊富に蓄えられたIGF-1, TGF-β等の増殖因子によりさらに活性化されるという非常に特徴的な進展様式をとる。本研究では骨基質中に最も優位に放出されるIGF-1に着目し,そのレセプターであるIGF-1Rを標的とした癌の骨浸潤・骨破壊の治療法の開発とその制御機構の解析を計画した。 今年度は数種の口腔癌細胞株におけるIGF-1Rの発現を確認しており,骨浸潤能の高い細胞株(SAS,HSC-3, HSC-2)で上昇していることを確認し、IGF-1の投与によりin vitroでの癌細胞の増殖、浸潤を促進することを明らかとした。そこでIGF-1R阻害薬の腫瘍細胞への影響を検討予定であったが、近年、IGF-1R阻害剤がインスリンレセプターと交叉反応することにより高血糖が誘発されることが報告されており、高血糖は癌細胞の増殖を促進することが懸念された。そこでIGF-1R阻害薬とともに高血糖を改善するインスリン抵抗性改善薬であるメトホルミン塩酸塩の併用を検討した。そこでまずメトホルミン塩酸塩単独での癌細胞に与える影響をまず検討することとし、in vivoのマウス腫瘍移植モデルにおいてメトホルミン投与群において腫瘍の増殖抑制と、in vitroにおいてメトホルミンのターゲットとされるAMPKのリン酸化の促進とともにIGF-1Rのリン酸化の抑制を確認。さらに細胞周期においてG1期での細胞周期を停止させることにより癌細胞をアポトーシスに導くことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はIGF-1R阻害薬単独での癌細胞へ効果を検討する予定であったが、インスリンレセプターとの交叉反応を示す可能性が考えられたためin vivoにおける検討でマウスに高血糖状態を誘発する可能性があり、急遽、インスリン抵抗性改善薬であるメトホルミン塩酸塩の併用を検討する必要があったため、まずメトホルミンの癌細胞に与える影響を検討した。結果的にはメトホルミン塩酸塩の口腔癌細胞株に対する抗腫瘍効果を見出すことができ、非常に有益な結果を得ることができた。今後は予定どおりIGF-1R阻害薬単独、メトホルミン併用での抗腫瘍効果を検討していく予定で十分に期限内での研究目的の達成ができるものと思われ、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究課題のについては前項にも示したように併用薬であるメトホルミン塩酸塩の抗腫瘍効果の検討を終えており、今後は本研究のメインテーマであるIGF-1R阻害剤を使用しin vivoではマウス腫瘍移植モデルおよびマウス骨転移モデルに与える影響を検討するとともに、メトホルミン塩酸塩を併用することによる相乗効果についての検討をおこなう予定としている。またin vitroにおいてpIGF-1R,pAKTなどのシグナル伝達に与える影響、アポトーシスに与える影響を検討する予定としている。さらにヒト臍帯血由来血管細胞株を用いてIGF-1R阻害薬の血管新生阻害効果に与える影響を検討することとしている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の国内および海外での学会発表を目指していたが実験計画で予定していた実験に加え,メトホルミン塩酸塩の抗腫瘍効果についての実験が必要であったため発表を見送り,当該研究費が生じた。次年度の研究費の使用計画についてIGF-1R阻害薬の追加購入、動物実験に使用するヌードマウス、ウェスタンブロット、免疫染色に使用する各種抗体、発表ならびに情報収集のための学会出張費、研究成果の論文投稿費などに使用予定である。
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