2013 Fiscal Year Research-status Report
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24792298
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
武元 嘉彦 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70452943)
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Keywords | 嚥下 / 口唇運動 / 舌圧 / 協調運動 / モーションキャプチャ |
Research Abstract |
近年、食育の観点からも上手に食べることが重要視されているが、気道通気障害を有する小児は「食べ方」に支障をきたしていることが考えられる。上手に食べるためには、「捕食・咀嚼・嚥下」の一連の動作が必要であるが、口蓋扁桃肥大などによる通気障害があると嚥下動作に悪影響を及ぼすことが予想される。 嚥下動作は頭頚部関連器官の複合的な協調運動であるため、これまで観察による評価が主流であり、数値化した客観的な機能評価は困難であった。また、嚥下動作は支援が必要な対象者の大部分は低年齢児や高齢者であるので簡便な評価法が望ましい。そこで、嚥下動作の客観的かつ容易な観察評価法が求められる。平成24年度に先行研究として成人を対象に、簡便な方法で三次元運動解析が可能なモーションキャプチャを用いて、嚥下時の口唇周囲の軟組織動態を定量評価し、嚥下時舌圧と同期観察した。上記について平成25年度に国内学会と国際学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日常動作に障害を持たない健常成人男性9名を対象に、高精度モーションキャプチャシステムを用いて5mlと20 mlの水を自分のタイミングにて一口で嚥下させ、各々3回計測した。また、嚥下時と安静時の口角間距離の差を求めるために、口唇を閉じて安静状態を計測した。嚥下時の最大舌圧値、嚥下時の最大口角間距離と安静時口角間距離の差(口角間距離変化量)、嚥下に伴い口唇が運動してから、舌が機能するまでのタイミングを調べるために、舌圧が最大となる時間と口角間距離変化量が最大となる時間の差(口唇-舌 時間)を求め、水量の相違による差について、 Wilcoxon 検定を用いて検討した。さらに異なる2つの水量を嚥下した際に得られる上記のデータの個体間、および個体内変動を求めて検討した。 一口量の増加により、舌圧に差はなかったが、口角間距離変化量は有意に大きく、口唇-舌 時間は短くなった。また、3項目全てにおいて水の量に関わらず個体内変動は個体間変動より小さく、口角間距離変化量と口唇-舌 時間は、個体内および個体間変動とも5mlよりも20 mlのほうが小さくなった。嚥下時の一口量が増加すると口唇の協調性がより求められ、舌よりも口唇の動きを大きくすることで嚥下動作を補助し口唇-舌 時間が短くなったと推察された。また、口角間距離変化量と口唇-舌 時間において、一口量の増加によって個体内および個体間変動が小さくなったのは、多量の水を一口で嚥下するには舌と口唇の協調性が求められるため、嚥下動作のばらつきが減少したためであると推察された。 以上のことから、嚥下時の口唇と舌の協調運動の重要性や、嚥下困難者への口唇トレーニングの必要性を客観的に示すことができた。また、嚥下における舌と口唇周囲軟組織動態を同時にグラフ上に明視化ができ、簡便で客観的な嚥下評価法となる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度までの研究成果により、口唇周囲にモーションキャプチャ用マーカーを貼付するのみで嚥下動作に伴う口唇周囲軟組織動態の三次元評価が可能であることが判明した。今回は舌圧との同期観察によって嚥下動作における舌と口唇の軟組織動態を数値化することで、舌と口唇の協調動態をグラフ上に可視化することができた。 マーカーを貼付する部位や貼り方を検討することにより、複数の嚥下関連器官の動態をグラフ上に可視化することが可能となり、その協調性が評価できるようになる可能性があるので将来的には臨床応用を目指したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度後半から申請者が長期入院と静養が必要となってしまい、未使用額が生じてしまった。 平成25年度までに研究計画を実施するための物品は購入したので、これまでの成果をさらに考察し、追加解析を行い学会で発表するとともに、国際誌に投稿する予定である。未使用額はその経費に充てる。
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Research Products
(4 results)