2012 Fiscal Year Research-status Report
看護師の離職意向を規定する要因についての検討―心理・社会的、経済的視点から
Project/Area Number |
24792376
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 みほ 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30588398)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 看護師の離職 / 職場環境 / 経済的要因 / 両立支援 |
Research Abstract |
本研究の目的は、看護師の離職意向と心理社会的労働環境要因・個人要因ならびに経済的要因との関連を検証することである。当該年度は看護師の離職および職業継続に関わる心理社会的労働環境要因、経済的要因に関する先行研究の収集およびレビューを行った。その結果、次のことが明らかとなった。(1)職場の組織風土、職場の人間関係、職場でのソーシャルサポートが離職の規定要因と示されている。(2)組織や職業に対するコミットメントの程度や職務に対する満足度が離職に関連する。(3)組織コミットメントに関わる要因の一つに、組織がどれだけ仕事と家庭生活の両立を尊重しているかということが挙げられる。(4)賃金の上昇は離職を抑制せず、職場の組織風土が離職に影響することが示されている。だが、サンプルの家計状況や地域の経済状況によってはこの限りではない。(5)米国では経済不況に伴い、離職率が減少した。その要因に看護師の賃金の高さ、看護職が安定した職業であること、配偶者の失業が認められた。 また、離職した看護師を対象に行ったヒアリングから、離職に関わる要因を抽出した。抽出された要因にはネガティブな側面とポジティブな側面があることが明らかとなった。ネガティブな側面には、自己啓発のための勉強時間の確保に対する配慮のなさ、余暇や友人との交流の時間が持てないことによるストレスの蓄積などが、ポジティブな側面には、看護職としてのスキルアップのための留学、専門性を高めるための組織の移動などが挙げられた。さらに、看護職に就いた理由に自分に合った職業だと感じたから、その一方で離職の理由に自分に看護職は向いていないと感じたからという声が聞かれ、ヒアリングからも看護職としてのアイデンティティや職業コミットメントが離職や職業継続に影響する要因であることが伺われた。以上に基づき次年度以降用いる調査票を作成、所属機関の倫理審査承認を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究課題申請時に計画した研究実施計画内容と実際の研究の進捗状況に大きな乖離が見られていないため。 ベースライン調査、追跡調査の調査票の策定が概ね終了し、および所属機関での倫理審査の承認を得ており、サンプリング設計作業も着々と進んでいることから、平成25年度以降2カ年の追跡調査実施の準備が計画通り行われていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、平成25年度、26年度に実施予定の追跡配票調査の研究協力先確保のため、サンプリング設計作業を行っている。平成25年度上半期に調査票の決定、調査研究対象者の確保を行い、第1回配票調査(ベースライン調査)を実施する予定である(平成24年度に所属機関倫理審査承認済み)。調査の方法としては、まず層化二段無作為抽出により選定された病院に2年間の追跡調査への協力依頼状、研究計画書、調査票を送付し、研究協力の依頼を行う。次に研究協力に同意の得られた病院に勤務する全看護師を対象にベースライン調査を実施する。なおパワーアナリシスに基づき、ベースライン時では2000名の対象者の確保を予定している。 平成25年度下半期には次の内容を実施する。ベースライン調査で得られたデータの電子化、データクリーニングを行った上で、データを解析する。調査対象となった施設および対象者の実態を記述的に明らかにし、次年度追跡調査の調査票内容および研究枠組みの確認(必要に応じて適宜見直し)を行う。 また、調査協力施設にはベースライン調査データを基に第1回目調査実施報告を行い、次年度の調査についての協力を改めて仰ぎ、回収率の低下を防ぐ。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度使用額は、平成24年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額と合わせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。 平成25年度は、看護師2000名を対象にベースライン調査を実施するため、研究費の使用計画は第一に、調査票用用紙および調査票送付・返信用封筒の購入、印刷、調査票送付・返送用通信費への充当が必要不可欠となる。合わせて、調査研究協力先確保のための協力依頼に係る諸経費の支出も必要となる。調査実施に際して、研究協力施設に赴き綿密な打合せの必要性が想定されることから、研究協力施設への往復の交通費も必要である。さらに、研究協力先に調査報告を行うために、報告書の作成に係る用紙購入費用、印刷費用の支出が必要である。当該研究は追跡調査であり、そのために個人情報のデータ収集も行うため、データの厳重な管理体制が必要となることから、ネットワーク非接続のデータ間利用のノートパソコンの購入を行う。また、ネットワーク非接続で追跡データの解析が可能な統計解析ソフトの購入も行うことを予定している。 当該研究課題に関連する最新の研究動向、知見、情報の収集を目的とした学会参加も必要であるため、そのための費用も研究費から支出することを計画している。
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