2012 Fiscal Year Annual Research Report
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24800045
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
武川 恵美 徳島大学, 大学病院, 医員 (50633872)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 生体材料 / 医療・福祉 / MRI / 金合金 |
Research Abstract |
研究代表者らは、磁気共鳴画像法(MRI)でアーチファクト(偽像)を生じない医療用合金としてAu-xPt-8Nb合金を開発した。この合金はAu-Pt合金をベースとすることから加工性が高くなく、複雑な形状の医療用デバイスの作製には不向きと予想される。加工性があまり高くない原因は、「スピノーダル分解」と呼ばれる超急速分離による2相分離を示すため加工容易な単相化が不可能であると推定された。この欠点を改良するため、2相分離を示さず単相化が容易なAu-Pd合金をベースとした合金の開発に着目した。Pdは顕著ではないがアレルギーが報告されている元素であることから耐食性が高く時効硬化熱処理が可能であるといった利点を持つPtを添加することとした。本研究では、アーチファクトフリーを維持しつつ、高加工性と高強度を両立させたAu-Pt-Pd合金を開発することを目標とした。具体的な目標は、①磁化率-9ppmでアーチファクトを生じない合金、②低温での加工が可能な、加工性の高い合金、③Au-xPt-8Nb合金と同等以上の強さを示す合金、である。 平成24年度は、磁化率が約-9ppmとなるAu-32Pd合金を基に、様々な組成のAu-Pt-Pd合金を作製し磁化率を調べた結果、Pd=10-40mol%の範囲で磁化率-9ppmを示すPt組成が存在することが明らかになった。これらの組成は1000℃で単相化が可能で、Au-xPt-8Nb合金と比較して圧延が容易で、高い加工性を示すことが分かった。現状において、Au-Pt-Pd合金の強度はAu-xPt-8Nb合金と比較してやや劣るが、今後、時効硬化の効果を調べ磁化率が-9ppmで高強度と高加工性を両立した組成と熱処理条件を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、Au-Pd合金を基本としたAu-Pt-Pd合金がMRIにおいてアーチファクトフリーと高強度と高加工性を同時に満足し、様々な複雑な形状のデバイスに応用可能な組成を明らかにすることを目標としている。平成24年に磁化率が-9ppmとなるとともに、1000℃で単相化が可能なAu-Pd-Pt合金の組成範囲を決定し、その範囲の合金の強度と、強度に対する時効硬化処理の効果を調べ、磁化率が-9ppmで最高強度を示す合金組成を決定する、ことを目標としていた。そこで得られた結果をもとに、平成25年度は強度向上を主眼とし、様々なデバイスの所要性質を満足した合金の開発を予定していた。 平成24年度の研究では、Au-Pd-Pt合金はPd=10-40mol%の範囲で磁化率-9ppmを示す組成が存在し、単相化が可能で高加工性を示すことが分かった。圧延後と溶体化熱処理後の強度はAu-xPt-8Nb合金と比較してやや劣っていた。 以上から、平成24年度中の時効硬化処理の効果の解明は間に合わなかったが、アーチファクトフリーを示す組成の特定と高加工性の確認ができたことから目的を順調に達成できたといえる。なお、Au-Pd-Pt合金は今後特許申請を予定しているため、具体的な数値は現地点では非公開とする。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究より、Au-Pt-Pd合金はPd=10-40mol%の範囲でアーチファクトフリーを示す組成が存在し、加工性に優れていることが明らかになった。しかし、強度は、Au-xPt-8Nb合金と比較してやや劣っていた。平成25年度は、これらの強度に対する時効硬化処理の効果を調べ、磁化率が-9ppmで最高強度を示す合金組成を明らかにする。その結果、得られた最高強度の合金の強度が様々なデバイスの所要性質を満足できていなければ、さらなる向上が必要である。仮に満足できていたとしても、より高強度の合金を開発できれば、デバイスの寸法を減少させることで、より細い血管に適用可能な細いステントが作製可能になるといった効果が期待できることから、平成25年度は強度向上を主眼とした開発を行う。Au-Pt基合金においては、Nbの添加によりアーチファクトフリーを維持しつつ、強度の向上が可能であったため、Au-Pd基合金でもまず第4元素としてNb添加の効果を明らかにする。しかし、磁化率への添加元素の影響は定性的な法則も少ないことから、Nbの添加で磁化率が-9ppmを維持できるかは不明である。そのため、Nb添加が不調に終わった場合は、生体親和性が高いとされる金属元素としてTa、Ti、Zr、Mo等の添加を試みる。ここまでの検討で、磁化率-9ppmを維持できる第4元素Xが見出せた場合、まず①Au-Pd-Pt-X合金の組成で、磁化率が-9ppmとなる範囲を明らかにする。②その範囲の合金の強度と時効熱処理の効果を調べ、最高強度を発揮する組成を明らかにする。③その合金の加工性を調べ、複雑な形状のデバイスへの加工が可能であるかを検討する。 第4元素として上記の元素の添加が不首尾に終わった場合、貴金属合金で金属組織の微細化効果が知られるIr、Rhの添加を試みる。
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Research Products
(3 results)