2012 Fiscal Year Annual Research Report
スマートナノファイバーネットを用いた新規尿毒素除去システムの開発
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24800085
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
滑川 亘希 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (60638568)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | ナノファイバー / 血液浄化 / 尿毒素 |
Research Abstract |
本研究では、①尿毒素を速やかに吸着し、②余分な水分を吸収し、③血液適合性に優れ、④非常に高い表面積を有する“スマート”ナノファイバーの開発を目的とする。まず、基礎検討として尿毒素を選択的に吸着するゼオライト粒子を検討した。ゼオライトの空隙部位や親疎水性、ゼオライト結晶の粒径を最適化したゼオライトにすることで、尿素やクレアチニンといった代表的な尿毒素の吸着量を最適化したゼオライトを得た。 ナノファイバーのベースとなる高分子には、エチレンビニルアルコール共重合体(EVAL)を用いた。EVALは血液適合性に優れ、かつ親水性でありながら水に不溶という特徴があり、製膜後の後処理が不要という利点がある。ナノファイバーの作製には、複数の高分子やゼオライトナノナノ粒子を自由に混合できる電界紡糸法を用いた。電界紡糸時のパラメータである溶媒の種類や高分子濃度、電圧、噴出速度、電極間の距離を調節した結果、様々な直径のEVALナノファイバーを製膜できた。特に沸点の異なる二種類の溶媒を混合することで500 nm以下の細いナノファイバーを得ることができた。また、紡糸時の高分子溶液にゼオライトを超音波混合することで、ゼオライトを内に取り込んだナノファイバーを製膜することができた。今後はナノファイバーの作製条件を至適化することで尿毒素吸着能を最大限向上させる。また、安全性を担保するためにナノファイバーの血液適合性についても牛血液系(in vitro)で評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の基礎検討において尿毒素を最大限吸着するゼオライトを得ることができた。また、ゼオライト含有ナノファイバーも製膜条件とファイバーの特性についての知見が得られ、当初の計画通り推移している。今後は、腎不全患者の生理条件を鑑みて、尿毒素除去を最大限向上させたナノファイバーの作製条件を検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度(平成25年度)は、ナノファイバーを4時間浸漬させることで尿毒素を健常人と同等の血液濃度まで低下させることを目標とする。昨年度作製したナノファイバーの作製条件を至適化することで尿毒素吸着能を最大限向上させる。具体的には、TEMやAFMを用いて直径や長さ、ゼオライトナノ粒子の含有量を評価し、さらに、尿素・クレアチニン・尿酸の水系吸着実験を行う。ファイバーの径(表面積)やゼオライトナノ粒子の含有量と尿毒素吸着能を網羅的に調べることで、最適なナノファイバーの作製条件を検討する。ファイバーの水の吸収挙動についても、ホメオスタシスを維持できる4時間で240 mL(1 mL/min)の水吸収を目標値として、同様に検討する。 水系だけではなく、透析患者の血中濃度・血液粘度を想定した牛血液系で尿素・クレアチニン・尿酸の吸着能をin vitroで評価する。具体的には、所定の除去性能が得られていることを確かめ、その結果をナノファイバーメッシュの作製条件にフィードバックする。また、ナノファイバーの血液適合性についても①血漿タンパク質系、②血液凝固系、③補体系の三面から多角的に評価し、安全性を担保する。血液凝固系については、抗凝固剤必要量及びプロトロンビン時間から評価する。
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