2012 Fiscal Year Annual Research Report
『ブラフマスートラ・バースカラ註解』第一篇訳註研究
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24820008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 隆宏 東京大学, 人文社会系研究科, 助教 (80637934)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | バースカラ / ブラフマスートラ / ヴェーダーンタ / サンスクリット写本 / インド |
Research Abstract |
本研究『ブラフマスートラ・バースカラ註解』第一篇訳註研究」の目的は、バースカラ著『ブラフマスートラ註解』の訳註研究を進めることにより、これまでほとんど研究されてこなかったバースカラのヴェーダーンタ思想を解明することである。具体的には、申請者によって準備された『ブラフマスートラ註解』の校訂批判テクストにもとづいて、新たに所在が判明した写本、遺稿などの新資料を参照しつつ、これまでいかなる言語にも翻訳出版公開されてこなかった同文献の英文による訳註を作成し、その成果を広く学界に問うものである。 平成24年度は、故ファン・バイトネン教授の遺した未公開の翻訳資料の保存と該当テクストと新たに発見された写本の照合を中心に行った。この行程においては作業補助者の協力を得て、資料のデジタルデータ化を完了した。これにより、未公開の貴重な資料が利用しやすい形式で保存された。これらは近い将来の公開に向けて準備中である。 また、平成25年2月に行った現地調査では、これまで複写などが許されなかったJai1写本の一部複写が許可され、これを含む写本情報を多く持ち帰ることができた。また、昨年度の調査ではこの他に、本研究で扱う『ブラフマスートラ・バースカラ註解』の要点をまとめた『バッタ・バースカラ・サーラ』というタイトルの新たな写本をみつけ、その一部を複写して持ち帰ることができた。この資料は本研究遂行のための貴重な資料であり、今後内容の検討などを進めていく予定である。 本研究の中核をなす訳註については、昨年度は第一篇第一章の訳註(本研究全体の4分の1程度)を完成させた。昨年度は本研究に関連するテーマで口頭発表(国際1、国内1)を行い、論文発表(英文3)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の計画では、ファン・バイトネン教授の遺稿の再生、新しいJai1写本の照合、訳註の作成という三つの部分のうち、遺稿の再生と写本の照合を完了し、訳注を半分程度完成させる予定であった。このうち、遺稿の再生については予定通り完了したが、第三段階の訳註研究が若干の遅れをもって進行している。その主な理由は、写本調査によって新たな写本が発見され、その分析作業に時間を割いたこと、また、Jai1写本照合の段階により多くの時間を費やしたことがあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度の遅れを挽回し、予定通りの研究を完了したいと考えている。特に、Jai1写本の照合を早めの段階で完了し、その後は訳註作成に時間をかける予定である。 今年度は途中、研究協力者であるドイツ・ハレ大学のスラーイェ教授のもとを訪ね、校訂テキストおよび訳註研究に関して協力を仰ぐ予定で、得られた助言などを最大限に生かし、効率良く研究を遂行していきたい。
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