2012 Fiscal Year Annual Research Report
コンテンポラリーダンスの社会的機能に関する研究-教育と福祉の観点から-
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24820023
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
富田 大介 大阪大学, 国際公共政策研究科, 特任助教 (70623809)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | コンテンポラリーダンスの社会的機能 / 教育 / 福祉 |
Research Abstract |
コンテンポラリーダンス(contemporary dance:現代舞踊)の実践と理論に深く関わってきた研究代表者は、コンテンポラリーダンスの社会的機能を「教育」と「福祉」の観点から捉えることを目指している。 もはや経済の成長を前提としえない中で、社会資本として「教育」「福祉」「芸術」を考えてゆくことは、プライオリティの高い研究課題であると思われる。研究代表者はこの想定から、自身の専門分野(芸術)を軸としつつ、それが教育や福祉とつながる超域的な研究を志向してきた。 採択初年度(平成24年度)においては、ダンスをはじめとするアートを支点として学校教育や福祉の領野とつながる個々のアーティストやNPO法人等の仕事を辿った。報告書などを渉猟するとともに、フィールド・ワークによる観察や聞き取りなどから分かってきたことは、その仕事を価値付ける「評価」の問題である。コンテンポラリーダンサーなどのいわゆる「アーティスト派遣」の意義は、教育ないし福祉の現場からも多分に認められているものの、その意味を報告する(評価付ける)仕方が未だ拓かれていないことが判明した。これは、既存の評価方式が期限切れとなっているというだけではなく、それを改変する(その改変を促す)言説が貧困であることをも表している。 この課題には、おそらく、数値による定量情報の集積に力を入れるだけでは未だしで、それをまとめ上げる(抽象化する)哲学的思弁力の見直しに意を注ぐことが肝要であるように思われる。言葉が読み手(ないし聞き手)に届くかどうかはその思弁力にかかっており、美学・芸術学の研究者はそこにおいて少なからず貢献できるはずである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の柱としていた文献・映像資料の収集や、現場観察・聞き取り調査などのフィールド・ワークについては、当初の計画以上の進展を見た(それゆえ旅費は予定の計上分を超えたが、流れを止めるのは不適当であったため必要な超過分だと考えている)。物理的、量的に情報を得るだけでなく、国内および海外のアーティストやリサーチャーとの良質な関係を紡ぎながら、研究を推進することができた。 とはいえ予想以上に、それらの資料の一つ一つが精査・精読を要求する性質のものであったため、その分析と解釈には時間がかかり、特に、ダンスと教育、ダンスと福祉の関係を紐解く歴史的考察についてはやや遅れをとっている(その遅れを早急に取り戻すべく今注力しているところである)。 外で探ることと内で探ることの配分を(H25年度は)調整してゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる今年は、前年度の研究を延長・拡大させる方針である。これまでの文献資料読解や短・中距離現地調査による基礎的な研究を踏まえ、H25年度はそれを活かしながら、諸々のコンセンサス会議(勉強会・座談会等)を実施する。また、日本のコンテンポラリーダンサーの海外(および北海道・沖縄等の遠方)での教育・福祉活動をフィールド・ワークする。それにより研究を多角的かつ重層的にし、最終的な総合へと仕立てていくことが可能となる。 【前年度の研究に加える事柄】 1. コンテンポラリーダンサーとワークショップ等を行ったことのある学校や福祉・文化施設(およびその企画者ないしコーディネーター)と、コンテンポラリーダンサーたちとの対話型会議を実施 2. 上記1に一般の参加者を交えた対話型会議を実施 3. 日本のコンテンポラリーダンサーの海外での教育・福祉活動についての現地調査、北海道、沖縄等の遠距離現地調査、およびそのアウトリーチ
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Research Products
(2 results)