2014 Fiscal Year Annual Research Report
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24820027
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
加納 亜由子 神戸大学, 経済経営研究所, 助教 (00634346)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2016-03-31
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Keywords | 日本史 / 当主の弟 / 家 / 家族役割 / 非相続人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、【豪農の二男として生まれ、家を相続しないまま、当主の弟・叔父の立場で生家に留まり続けた人物(当主の弟)】に注目。彼が豪農経営の中で当主の補佐的な役割を果たしたのではないかという仮説を設定し、当主の弟など非相続人の家族役割の見直しをすすめている。主に分析対象とする史料は、彼が実兄(当主)に宛てた書状(「当主―弟の間で交わされた書状」)である。 今年度の研究成果は以下の通りである。「当主―弟の間で交わされた書状」の解読を進めるため、書状内容の傍証となる史料・文献の収集と分析に重点を置いた。 その結果、書状の要件はa)村役人・地方役人業務の相談事項、b)家政に関わる問題の二種類であること、(a)については、「掛屋(当主)」と「掛屋見習(弟)」という立場で交わされたものであり、公用遂行の側面が大きいことが分った。 一方で、(b)家政に関わる問題については、家の所持地に関わるトラブルなど家産管理上の重大な相談事項を含んでおり、当主の弟が問題解決に奔走したことが分った。一般的に、近世社会では当主が家産管理権を持ったとされており、当主の弟など非相続人はそのような権限を持たない存在(「家や村の中で一人前の扱いを受けなかった」)と認識されている。当該事例は、当主の弟が、当主の権限を代行する形で村社会との折衝をすすめていたという点で、研究史上の共通認識から外れており、非相続人の家族役割を再考する上で興味深い事例である。 次年度(最終年度)には、家産管理権を持たないはずの弟(非相続人)が問題解決に奔走することの意義の解明―家や村社会との軋轢など―に重点を置いて研究をすすめる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主要な分析対象である書状の解読・分析ならびに、関連する史料・文献の収集分析はおおむね順調に進展している。 加えて、書状ならびに関連する史料の分析を通して、研究史上の重要な論点(「家」経営における当主の権限)に迫ることができる課題を抽出することができた。 ただし、学会で研究発表を行った際に、書状解読に不十分な点があることが判明した。関連する文献の収集や研究史の論点整理を十分に行い、当時の時代背景・社会情勢を踏まえた上で、書状の分析結果を見直す必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究の研究の一番の成果でありかつ一番の課題でもある「家産管理をめぐる当主と弟との役割分担」の実態解明に焦点を当てる。家産管理権を持たないはずの弟が問題解決に奔走することが、当時の社会の中でどのように捉えられたのかという点について、家内部の問題(当主やその他家族構成員の反応)・村社会との軋轢の両側面から、研究成果をまとめる予定である。 この点については、学会で研究発表を行った際に、「村社会との軋轢」の実態を示す書状の解読に不十分な点があること、当時の時代背景・社会情勢を踏まえた上で分析結果を見直す必要があることが判明した。これは研究成果の中核をなす部分であり、より綿密な分析が求められる。 そこで次年度は、今年度に引き続き傍証となる史料・文献の収集・分析に重点を置くとともに、近世家研究の研究史の再整理・批判検討にもより重点を置いて研究をすすめる必要がある。
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Research Products
(1 results)