2012 Fiscal Year Annual Research Report
「ゾンビ企業」の発生・復活メカニズムと投資行動、企業統治の関連性
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24830033
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
中村 純一 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (80627969)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 問題企業の復活 / 失われた20年 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、日本における「ゾンビ企業」の発生・復活メカニズムについて、投資行動やコーポレート・ガバナンスの観点から再検証し、バブル経済の崩壊からリーマンショック後までの約20年間(失われた20年)の日本企業に何が起きたのかを明らかにすることである。 平成24年度は、上場企業の財務データ等に基づき、「ゾンビ企業」の復活・発生要因の分析に用いる基礎的なデータセットを構築した上で、日本の「失われた20年」における「ゾンビ企業」の復活メカニズムに焦点を当てた実証分析に取り組んだ。特に、復活メカニズムが時期によって異なるのではないかとの問題意識のもと、大量の予備的な推定作業を行い、説明変数リストと推計期間の分割方法を入念に検討した。 これを踏まえて行った多項ロジット・モデルの推定結果からは、会計ルールや金融行政のあり方が旧来の「日本型」の特徴を残していた2001年まで(旧レジーム)と、諸制度がほぼ今日の姿となり不良債権が急速に減少した2002年以降(新レジーム)とで、復活メカニズムに大きな違いがあったことが判明した。 すなわち旧レジームでは、「ゾンビ企業」の復活に従業員や固定資産のリストラ効果は明確でなく、役員賞与のカットや売上高の伸びが復活に有意にプラスの影響を与えていたのに対し、新レジームでは、従業員や固定資産のリストラ効果が顕著になり、役員賞与のカットや売上高の伸びが有意でなくなるなど、コスト・カット頼みの復活となっていた。 以上の成果は、マクロ経済への含意としても学術的に意義があると考えられ、この観点から1編の論文を執筆した(花崎正晴・大瀧雅之・隋清遠編『金融システムと金融規制の経済分析』、勁草書房より平成25年7月刊行予定、に所収)ほか、平成25年度にコーポレート・ガバナンスや投資行動との関連をさらに掘り下げていくうえでの土台となる重要な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度における主要な成果として研究計画していた「ゾンビ企業」の復活メカニズムに関する論文を執筆し、専門家向けには、研究代表者が所属する一橋大学経済研究所経済制度研究センターのディスカッション・ペーパー(日本語)や、東京大学で開催された国際コンファレンスにおける研究報告(英語)などを通じて、また、非専門家向けには、日本経済研究所『日経研月報』への解説記事の寄稿を通じて発信し、その過程で平成25年度の研究につながる貴重なコメントも得ることができた。また、以上と並行して、平成25年度の研究に必要となるデータの入手や加工も進捗しており、研究計画はおおむね予定通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、研究計画の最終年であり、「失われた20年」における日本企業の低収益性やデフレ経済に対し「ゾンビ企業」問題がいかなる意味を持っていたのかについて、より幅広い角度から検討し、結論を得るようにしたい。そのため、当初想定していた「ゾンビ企業」の発生メカニズムや投資行動の分析を中心に、平成24年度の研究成果を通じて得た新たな視点も付け加えて、論文にまとめていく計画である。具体的な研究の推進方策としては、平成24年度に構築したデータセットをもとに、必要に応じて新たなデータを追加しつつ推計・執筆作業を進め、学会などでの研究発表を経て、学術雑誌への投稿を行う。
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Research Products
(2 results)