2013 Fiscal Year Annual Research Report
星間分子雲における極低温表面原子反応によるアミノ酸の重水素濃集機構の解明
Project/Area Number |
24840001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大場 康弘 北海道大学, 低温科学研究所, 特任助教 (00507535)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | アミノ酸 / 重水素濃集 / 星間分子雲 / 極低温表面反応 |
Research Abstract |
本研究では,星間分子雲に存在する氷星間塵表面におけるアミノ酸およびその前駆物質の重水素濃集機構解明を目的としている。 前年度までにアミノ酸蒸着装置の選定・購入を済ませ,さらに本研究専用の超高真空極低温表面反応実験装置の設計・組み立ての大半を終えていた。本年度はまず装置の組み立てを完成させ,真空度計測装置や温度モニター,加熱用ヒーター用の電気系統の配線をおこない,さらに原子源および蒸着装置の水冷用の水回りの整備をおこない,装置を起動できるまでに至った。 もっとも単純なアミノ酸であるグリシン50㎎を蒸着装置の石英サンプルホルダーに入れ,蒸着装置を実験装置に取り付けて真空引きした。一晩以上真空で放置し,アミノ酸に吸着している可能性がある水などを除去した。蒸着装置先端を反応基板の表面からからおよそ1.5cmの位置に固定し,160℃に加熱した。160℃に到達後,蒸着装置先端のシャッターを開け,12Kに冷却した反応基板上にグリシンを蒸着させた。赤外分光光度計による分析で,グリシンが実際に反応基板に蒸着されていることを確認した。得られたスペクトルは,同様の方法で蒸着されたグリシンのものと,よく一致した。グリシン蒸着量を正確に見積もることは現時点で容易でないが,先行研究と比較すると,厚さ数ミクロンの薄膜だと考えられる。 続いて,作製したグリシン薄膜(12K)に原子源で作製した重水素原子を4時間照射した。照射開始後30分程度で照射前の赤外吸収スペクトルには見られなかった領域に吸収バンドが成長し,これらが重水素置換体に由来するものだと判断した。本研究結果は,グリシンが星間分子雲における極低温固体表面反応で重水素濃集可能であることを強く示唆するものである。さらに炭素質隕石中グリシンが重水素に富むことと調和的であり,星間塵表面反応が隕石有機物の重水素濃集の要因の一つとなる可能性を初めて示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Reason
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(10 results)