2012 Fiscal Year Annual Research Report
流れ場および反応構造を考慮した衝突噴流熱伝達機構の解明
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24860002
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
松岡 常吉 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90633040)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 衝突噴流 / 固体燃料 / 平面ノズル / 熱伝達 / ダムケラー数 / レイノルズ数 |
Research Abstract |
単一の2次元平面ノズルおよび固体燃料を含む実験装置の設計と製作を行い,燃焼実験を実施した.430nmバンドパスフィルタを用いたことで固体上に形成された拡散火炎の詳細な観察が可能となり,よどみ点近傍と試料端では火炎の輝度が異なることがわかった.また,酸化剤流量を変えて同様の実験を行い,ダムケラー数と燃料の後退速度との関係を明らかにした. ダムケラー数がある値よりも小さい条件では火炎が吹き消え,燃料の後退はほとんど起こらなかった(以下,吹き消え時のダムケラー数を限界ダムケラーと呼ぶ).限界ダムケラー数よりも大きくなると,後退速度の変動の大きい遷移領域を経て,後退速度がゆるやかに低下する安定燃焼領域へと燃焼モードは遷移した.実験後の固体燃料の形状は供給した酸化剤流量によって異なった.安定燃焼領域では,後退量はよどみ点近傍で最も大きく,よどみ点から離れるにつれて後退量は減少した.一方,遷移領域では安定領域よりもよどみ点近傍が深く後退している場合と,吹き消えによってよどみ点近傍に凸型の形状が残る場合の二つの場合が見られた.このことと後退速度の変動が大きかったことから,遷移領域で形成される火炎は不安定であることが示唆された.また,限界ダムケラー数以下では燃焼後の燃料中央部に凸型の大きな出っ張りが形成された.これはよどみ点近傍で吹き消えが起こったことによるものと考えられる.凸部の横は後退が進んでいることから,よどみ点で火炎が吹き消えたときも,その横では火炎が保持されていることが示唆された. レイノルズ数に対して後退速度をプロットすると,よどみ点では従来の非燃焼の衝突噴流熱伝達に比べて熱伝達が促進され,よどみ点から離れた位置では,非燃焼の場合とほとんど同程度であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度では,さまざまな実験条件(燃料形状,酸化剤流量,酸素濃度,雰囲気圧力)において単一平面ノズルを用いた燃焼実験を実施し,流れ場や反応構造を決める無次元数と熱伝達率の関係を導出するまでが達成目標であった.しかし,大気圧下において酸化剤流量を変えた実験は実施できたが,それ以外のパラメータを変えた実験を実施することはできなかった.上記の結果から,後退速度とレイノルズ数およびダムケラー数との関係は見出したものの,実験パラメータとして流量しか変えていないため,異なる流れ場構造や反応構造で成り立つような相似則はまだ見いだせていない.達成度が遅れた最も大きな原因は,採択後に現在所属の大学への異動があり応募時に見込んでいたエフォートよりも実際のエフォートが少なくなってしまったことだと考えている. それ以外の原因としては下記の理由が挙げられる.本研究では流れ場と火炎の2次元構造を明確に観察するために円筒ノズルではなく平面ノズルを用いていた.この場合は前後方向への火炎の擾乱を防止し,かつ燃焼中の火炎を観察できるように,燃焼場の奥行き方向をガラスで拘束する必要がある.非常に高温となる燃焼場での使用に耐えられるように耐熱ガラスであるバイコールガラスを用いたが,生産量が少なく入手が困難であったため実験装置の完成に時間がかかった.また,酸素濃度が低い場合に従来の方法では着火させることができず,着火方法の確立にも時間がかかったことも原因のひとつである. 本研究では既存設備を用いてLDVによる燃焼場の流速計測を実施する予定であった.しかし,申請者の異動のため既存設備を使用できず,LDVによる流速計速を一切実施できなかったことも達成度を低く評価した理由である.現所属機関にはPIVの設備があるため,本年度はLDVの代わりにそれを用いた速度場計測を実施する.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の実験に用いた実験系は当時の所属研究室で所持していた装置や部品等をいくつか流用していたため,本年度の研究を遂行するにあたっては申請者の現在の所属機関において再度実験装置を製作する必要がある.新しい実験装置はPIV計測が可能で,かつ酸素濃度も変えることができるものとする.さらに昨年度の研究から明らかとなった問題点はすべて改善する.ただし,達成度が遅れていること,応募者にPIV計測の経験がないことを考慮し,できる限り単純化した装置で実験を実施するために,予定していた雰囲気圧力を変えた実験は行わないことにする.実験装置の製作は7月をめどに完了する予定である. 今年度はまず昨年度予定していたが実施できなかった,酸素濃度を変えた実験を行う.酸素濃度を変えることで化学反応速度が異なる条件で比較することが可能となり,昨年度得られた結果を一般論へと拡張することができる.また,壁のある固体燃料を用いた実験も行い,ファウンテン流や二次衝突の影響も調べる.今年度は,さらに当初からの予定である複数ノズルの製作も行い,それを用いた実験も実施する.製作には昨年度に得られたノズル設計のノウハウが利用できる. 現時点では無次元熱伝達率であるヌセルト数と流れ場,反応速度および燃料形状などを決める無次元数との関係を導出するまでに至っていないが,単一および複数ノズルの実験で新たに取得するデータと昨年度までに得られたデータをあわせて整理することで,ヌセルト数とそれらの無次元数との関係を導出できるものと考えている.
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Research Products
(1 results)