2012 Fiscal Year Annual Research Report
3次元フォトニック結晶による立体的光伝搬制御に関する研究
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24860034
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石崎 賢司 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40638524)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | フォトニック結晶 |
Research Abstract |
本研究は,3次元的な人工の光ナノ構造である「3次元フォトニック結晶」において,微小領域における自在な立体光伝搬制御の可能性を探求し,その応用展開を検討していくことを目的とするものである.平成24年度は,立体的かつ有機的に光導波路を組み合わせた立体光伝搬構造の設計概念を提案するとともに,そのような構造の実現基盤となる3次元構造の作製法の構築を図った.これにより,微小領域において,必要な場所から必要な場所まで,立体的に光を伝搬させることに成功した.具体的な成果は,以下のとおりである. (1) 立体光伝搬構造(光配線構造)の設計概念の提案.3次元フォトニック結晶における導波構造は,これまで,試行錯誤的に導入されたものがほとんどであり,それらを広帯域・高効率に接続することはできていなかった.本研究では,3次元結晶の結晶構造の対称性を考慮して,面内方向や面外方向等に対して,同様の伝搬特性を有する導波路を導入し,それらを相互に接続することを提案した.この結果,導波路の導波帯域のほぼ全域で高い透過率(光通信波長帯で幅150 nm,透過率90%以上)で接続できることを見出した. (2) 3次元フォトニック結晶構造の形成技術の構築.ストライプ状にパターニングした半導体を,ウエハ融着法による接着技術によって積層し,3次元フォトニック結晶を形成する手法において,画像処理(幾何学的パターンマッチング法)を援用した定量的な積層位置誤差の判定と,電動ステージのフィードバック制御により,自動で高精度な積層構造が実現できるシステムを構築した.これにより,16層等の多積層構造の実現を可能した. (3) 上記の結果に基づき,3次元光伝搬構造(光回路)のプロトタイプを試作した.3次元的に面外-面内-面外の導波路を接続した導波構造等において,伝搬光の観察,帯域の評価を行い,世界的に初めて,3次元光導波の実証に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究では,(1) 立体的かつ有機的に光導波路を組み合わせた立体光伝搬構造の設計概念を提案する,(2) そのような構造の実現基盤となる3次元構造の作製法の構築を図る,(3) 上記を基礎として,微小領域において,必要な場所から必要な場所まで,立体的に光を伝搬させることが可能であることを実験的に示す,という3段階の研究計画を提案した.まず,(1) の設計概念については,結晶構造に着目し,その等価性に留意して導波路を導入するという,これまでになかった着眼点から研究を進めたことで,立体的に接続可能な導波路の基本体系の設計に成功した.(2) の作製面に関しては,従来の積層装置をベースとしながらもこれを自動化することを行い,その結果として,どのような多積層の構造でも,100 nm以下の精度で自動的に位置合わせ・積層が可能なシステムとして構築することができた.この開発は,当初の予想以上のものであり,従来は8層程度の積層までしか実現できていなかった高精度な3次元結晶を,16層以上の積層構造にまで推し進めることができた.以上が良好に実現できたことによって,(3) の3次元光伝搬構造のプロトタイプの試作と,実験実証へと繋げ,良好な実験結果を得ることができている.これらの成果については,Nature Photonics誌に掲載され、新聞報道等でも、注目を集めている。また京都大学のホームページにも掲載されており、充分な情報発信ができたと考えられる。以上より,本年度の研究は,当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,平成24年度に構築を進めた立体的な光伝搬制御を可能とする構造を基礎として,立体的な導波路からなる光回路をプローブとして用いた,3次元フォトニック結晶の内部に特有の光学現象の評価への展開を図る.特に,全方向に対して完全に光を閉じ込めた高Q値3次元フォトニック結晶ナノ共振器の実現とその評価への展開を,中心として行う.具体的に,以下のよう推進方策を検討する. (1) 外部からの光入出力に適した立体回路構造ならびに導波路光入出力構造の検討:3次元フォトニック結晶の内部に共振器を形成した場合,その光閉じ込め性能(Q値)は,共振器部の周辺の周期数(つまりフォトニック結晶構造の積層数の大きさ)によって決定され,周期数を増大させることで指数関数的に強く光を閉じ込めることができるようになり,極限的な高Q値ナノ共振器の実現が可能と期待される.一般に,このような系に光を導入し,また閉じ込められた光を観察することは極めて難しいが,立体光回路構造を,外部との入出力にも適したものへと発展させ、問題の解決を図る.導波路と共振器との結合構造の解析を行い,どのような配置が評価に適切であるか明らかとする.さらに,導波路入出力部の最適化設計(終端部形状の制御)についても検討する. (2) 多積層構造の実現技術の構築:上記の構造を実現するために,充分に多積層の構造(32層~40層)の実現技術を構築する.特に,大面積の構造を一括して,自動システムにより積層し,これを分割しながら積層することを繰り返すことで,構造作製に要する時間の大幅な短縮を図る. (3) 上記に基づいて,実際に光導入用の立体光回路,高効率入出力ポート,そして高Q値ナノ共振器を含む系を構築する.これにより,これまでに実現例のない,多積層3次元フォトニック結晶内部での光学現象について,実際にどのような効果が得られるのか検証していく.
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