2012 Fiscal Year Annual Research Report
オートファジーに着眼したウエストナイル脳脊髄炎の発症機構の解明
Project/Area Number |
24880002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 進太郎 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 博士研究員 (00634205)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 獣医学 / ウイルス / 病理学 / 脳炎 |
Research Abstract |
本研究は脳脊髄炎を惹起するウエストナイルウイルス(WNV)と、細胞内タンパク質分解系の一つとして知られるオートファジーとの関係を明らかにすることで、ウエストナイル脳脊髄炎の発症機構を解明することを目的としている。平成24年度は、WNVの増殖におけるオートファジーの与える影響と、WNV感染によるオートファジーの抑制機構について解析した。 ①WNVの増殖におけるオートファジーの与える影響 オートファジーに必須な因子であるATG5を欠損した細胞にWNVを接種し、ウイルスの増殖能を野生型の細胞と比較すると、ATG5欠損細胞では多くのWNVが産生されることが明らかになった。また、ATG5欠損細胞にATG5を強制発現させると、ウイルスの産生は野生型細胞と同程度であった。これらのことから、オートファジーはWNVの増殖を抑制することが判明した。今後は、オートファジーによって抑制されるWNVの増殖ステップを明らかにする。 ②WNV感染によるオートファジーの抑制機構の解明 WNVを細胞に接種し、様々な時間でオートファジーの抑制をオートファジーマーカーであるLC3-IIの発現を指標に観察すると、オートファジーの抑制は感染後3時間までに生じることが明らかとなった。WNV感染後、ウイルスタンパク質の発現までの時間を考慮すると、オートファジーの抑制はウイルス粒子を形成するタンパク質と宿主因子の相互作用によって惹起される可能性が示唆された。現在、ウイルス粒子を形成するタンパク質の発現プラスミドを構築し、オートファジー抑制ウイルスタンパク質の特定を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
WNV感染によるオートファジーの抑制機構を解明することを目的としている。 全部で10個のウイルスタンパク質発現プラスミドを構築する予定であったが、発現を確認できないプラスミドが認められたので、現在、異なったプライマーを用いて、発現プラスミドの作製に着手している。 また組換えWNVの作製のため、変異を導入していないinfectious WNVゲノムをコードするプラスミドを293T細胞に導入し、感染性粒子が形成されることを確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
オートファジーを抑制するウイルスタンパク質の同定のために、それぞれのウイルスタンパク質発現系を構築する。構築した発現プラスミドを神経系由来の細胞に導入し、オートファジーマーカーの発現を抑制するウイルスタンパク質を特定する。続いて、オートファジー抑制ウイルスタンパク質のアミノ酸配列の一部を欠損、または他のアミノ酸に置換した変異体タンパク質を神経系由来細胞に導入し、オートファジーの抑制に重要な部位を決定する。 オートファジーを抑制するウイルスタンパク質の野生型と変異型を、それぞれ神経系細胞に発現させ、ウイルスタンパク質の抗体を用いて免疫沈降を行い、質量分析を用いて相互作用する宿主因子の同定を行う予定である。 infectious WNVゲノムをコードするプラスミドを鋳型に、オートファジー抑制に重要なアミノ酸に変異を導入したプラスミドを作製し、組換えWNVを作出する。作出した組換えWNVを神経系培養細胞に接種し、オートファジー抑制能の有無を確認する。また、アポトーシス関連タンパク質の免疫化学染色などを行い、変異体WNVの感染による神経系細胞でのアポトーシスの発生率を野生型WNVと比較、検討する。続いて、変異体WNVをマウスに接種し、マウスの生存解析、p62抗体を用いた脳組織の免疫染色など病理組織学的解析を行い、WNV感染による神経細胞の障害の程度を野生型WNVと比較、検討する。
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Research Products
(3 results)