2012 Fiscal Year Annual Research Report
口腔細菌に起因する炎症性腸炎悪化に対する小児歯科領域からの予防システムの構築
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24890123
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浦田 あゆち 大阪大学, 歯学部附属病院, その他 (90589772)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 炎症性腸炎 / 口腔細菌 / 感染性心内膜炎 / 潰瘍性大腸炎 / Streptococcus mutans / Streptococcus sanguinis / IFN-γ / 中和抗 |
Research Abstract |
う蝕の主要な病原性細菌である Streptococcus mutans は、感染性心内膜炎の起炎菌としても知られている。近年、口腔細菌と様々な全身疾患との関連が指摘されているが、消化器疾患に対する影響に関連するものはほとんどない。炎症性腸疾患は、主として消化管に原因不明の炎症をおこす慢性かつ難治性の腸疾患の総称である。これまでの研究は主に腸管粘膜側からの細菌を主体としており、口腔細菌との関連の検討は行われてこなかった。最近になって、S. mutans 菌株による炎症性腸炎の発症・悪化における影響とそのメカニズムの一端を明らかにした。今年度は、各種の口腔レンサ球菌株を用いて、潰瘍性大腸炎のモデルとして一般的に用いられているマウス腸炎モデルにおける病原性を検討した。その結果、S. mutans 以外にもある種の S. sanguinis 株によっても腸炎悪化が認められることが示された。これまでの研究結果より IFN-γ が腸炎悪化に関連していることが示唆されたため、本研究においても検討したところ、肝臓における著明な発現が認められた。さらに、IFN-γ の中和抗体を事前に投与しておくと、腸炎悪化が抑制されることが明らかになった。これらのことから、ある種の口腔レンサ球菌は腸炎悪化と関連することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者の口腔細菌叢の分析は未だ開始できていないが、それ以外は申請時に立てた計画通りに進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
1.腸炎モデルを用いた各種口腔レンサ球菌株における病原性の解析 潰瘍性大腸炎のモデルとして一般的に用いられているデキストラン硫酸ナトリウムを用いたマウス腸炎モデルにおける各種口腔レンサ球菌株における病原性を検討する。 2.腸炎悪化に関連するサイトカインの検討 IFN-γ 以外にも一般的に腸炎の悪化に関与するとされているサイトカイン(TNF-α,IL-1β,IL-6,IL-17など)についても検討する。また、マウス腸炎モデル上で病原性が高いと考えられる株や低いと考えられる株を感染させ、標的臓器を摘出して各サイトカインのmRNAの発現量をリアルタイムPCRを用いて定量し、その変化を分析する. 3.小児・思春期患者の口腔細菌叢についての分析 小児・思春期患者における口腔細菌叢の分析を継続し、in vitro系や動物実験で病原性が高いと考えられた株と同タイプの株の存在頻度を検討する。 4.高リスク細菌の保有者を簡易同定するシステムを構築 腸炎の悪化を誘発する高リスク細菌株の特定ができれば,ヒトの唾液サンプルよりこの高リスク細菌株の保有を簡易同定するシステムの構築を目指す.現在,腸炎を悪化させるタイプの S. mutans 菌株の検出法について検討を進めている段階であるが, S. sanguinis など新たに病原性が高いことが判明した菌種および菌株についても,その検出法の構築を順次開始する.
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Research Products
(2 results)