Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 正仁 京都大学, 学際融合教育研究センター, 特定准教授 (20514285)
田村 幸雄 東京工芸大学, 工学部, 教授 (70163699)
丸山 敬 京都大学, 防災研究所, 教授 (00190570)
植松 康 東北大学, 工学研究科, 教授 (60151833)
奥田 泰雄 国土交通省, 国土技術政策総合研究所, 建築新技術研究監 (70201994)
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Research Abstract |
平成24年5月6日に北関東地方に発生した複数の竜巻による,茨城県と福島県での突風被害の実態調査を行い,以下の所見を得た。 (1)被害規模は以下のとおり。つくば市・常総市の竜巻:風速70~100m/s前後,被害面積17km×500m,真岡市・益子町等の竜巻:風速33~69m/s,被害面積32km×650m,筑西市等の竜巻:風速33~49m/s,被害面積21km×600m,福島県会津美里町の竜巻:風速33~49m/s,被害面積2km×300m。竜巻はわが国では珍しい直径13~14kmの円に相当する大型の積乱雲(スーパーセル)から発生し,70~90分の長い寿命を有した。多くの気象観測機器によって捉えられた竜巻発生時の気象状況を数値シミュレーションとの同化によって再現できた。 (2)建造物の被害として,250棟を超える全壊建物,べた基礎ごと横転した木造住家,上部構造が飛散した多数の木造住家,5階建て集合住宅の全階層に及ぶ開口部と室内の被害,工業団地オフィスの開口部や金属屋根葺き材の被害,道路アスファルトの剥離・飛散,電柱・高圧送電線等の電力設備被害,等,わが国ではほとんど報告のない甚大な被害形態が見られた。これらの被害実態は都市部での新たな突風被害情報となった。いくつかの被害状況からは,フジタスケールF3~F4の風速域(70~100m/s前後)が推定された。 (3)飛散物の衝突による建物被害が多数発生し,木造住家の瓦などの外装材だけでなく,上部全体が大型飛散物になった事例や普通乗用車・トラック車両などの重量物の飛散が見られた。市民が撮影した動画記録をもとに飛散物の飛翔状況の分析を行い,飛散物の飛翔速度の算定例として76~100m/s以上の値や飛散物の衝撃力の推定値を得た。 (4)被災住民へのアンケート調査では,竜巻発生時の天候状態,危険認知度,危険回避行動,被災後の生活と復旧の状況,竜巻注意情報への要望と期待,自治体の支援施策への要望,などについて分析し,竜巻等による突風被害の軽減対策のための指針作成に資する貴重な情報を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)竜巻ロート雲や飛散物の多数の映像記録や大規模積乱雲の発達を捉えた高密度レーダー網の記録などを多数収集でき,竜巻発生の監視予測技術の向上に資する学術資料であることが判明。(2)短期間の調査にもかかわらず実施した,実験を含む被災建物への作用風速や飛散物の飛散速度の映像分析などによる詳細な算定は,これまでに報告されていない極めて重要な知見と論点を提供した。(3)500世帯を超える被災住民のアンケートにもかかわらず,51%の高い回収率は自然災害関連の被災アンケートとして極めて高い数値である。行動パターンの分析結果は防災行政分野での重要な基礎資料となり得る多数の新たな知見を得た。以上は申請時計画を上回る成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は終了した。 竜巻による地上風速の推定では,建物の被害状況から従来の耐風工学的手法に基づいて風速推定を行ったが,現在行われているフジタスケールとの対比にはいくつかの課題が明らかになり,わが国の建物の施工法や構造強度上の特徴を考慮した「修正フジタスケール」による風速判定の手順が必要であることがわかった。今後,今回の被害情報分析を有効に活用して,「日本版拡張フジタスケール」の策定に向けた新たな課題として取り組みが可能である。
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